札幌、室蘭、名寄の3地区で代表決定戦が行われ、新たに9代表が決まった。札幌では、西の強豪、大阪桐蔭(大阪)流の打撃練習を取り入れパワーアップした札幌丘珠が、札幌清田の好右腕を攻略し、2年ぶりに南大会に進出した。
同点の6回だった。札幌丘珠の9番打者、阿部祐樹遊撃手(3年)が直前のミスを取り返すかのように、5球目の直球をフルスイングした。冷静に、死に物狂いで、フルスイングした。
理由があった。カウント1ボール1ストライクからの3球目、スクイズバントのサインに空振りした。飛び出した三塁走者が三本間に挟まれタッチアウト。1死満塁の絶好機が一転、2死一、二塁になっていた。「今までもチャンスをつぶしてばかりだったけど、監督の『思い切り振れ』の言葉に励まされた」。このままでは、終われない。迷いを捨てた一打は、風にも乗って左中間のフェンスを越えた。
今春の地区予選で、無安打無得点に抑えられた札幌清田のエース実松雄貴(3年)に16安打を浴びせ、雪辱した。「本調子じゃなかったのか、直球が来てなかった」と金子磨志(きよし)監督(50)。鋭いスライダーは捨て、直球を狙った。
5回に3安打を集め、2点差を追い付いた。迎えた6回、阿部の勝ち越し3ランが飛び出した。小1から野球を始めて初の柵越えに「1度、ダイヤモンドを回ってみたかったので気持ち良かった」と、打のヒーローははにかんだ。
「公立最強」をスローガンに掲げる札幌丘珠は、過去4度出場の南大会ですべて初戦敗退に終わった。変革を求めた金子監督は、春夏通算5度の甲子園優勝を誇る大阪桐蔭に出向き、練習を見学した。このオフ、同じ打撃メニューを選手に課した。
特注した970グラムの木製バットを使い、4カ月間で5万スイング。通常より60~70グラムほど重い“大阪桐蔭モデル”のバットは、グリップも太く、ヘッドが返りにくい。下半身主導の力強いスイングでなければ、打球は前に飛ばない仕組みだ。手のひらに出来たマメがつぶれ、止血用のテープはあっという間に底をついたが「今になって効果が出て来ましたね」と阿部。非力だった9番打者が、頼もしく成長した。
「強打」を生み出す秘密兵器で振り込んだ打線は、夏の地区全3試合で2桁安打をマークした。阿部は「監督を南大会に連れて行ってあげたかったので、うれしい。勝って、歴史を塗り替えたい」。勇退を決めている金子監督に、最高の夏をプレゼントする。【中島宙恵】

