岩手では久慈が「久慈(くじ)運」を味方にして、79年以来38年ぶりに決勝に進出した。9回6-4の1死満塁から、3番手で2年生左腕中田夢人がマウンドに。あわや暴投となる初球を投げた直後に降板を告げられたが、打者1人に投げきらないと交代はできないルールのため再登板。開き直りが奏功して大船渡東の後続を断った。

 思わずびっくりの“投手交代”が、久慈を甲子園まであと1勝に近づけた。9回1死満塁。黒沢尻工との準々決勝で救援し、5回無失点と好投した中田が3番手でマウンドに上がった。初球。「ストレートが指に引っ掛かった」とワンバウンド。捕手が後逸し、投球は球審の足を直撃。幸い暴投にはならず失点もなかったが、直後に佐々木雄洋監督(36)は交代を命じた。

 中田は1球を投げただけで、ベンチに下がった。4番手として右腕外野快斗(3年)がマウンドで投球練習を始めようとしていた。だがルールでは、打者1人に投げきらないと投手交代はできない。球審がそれに気付き、中田が“登板”した。一打出れば同点、長打なら逆転もある窮地。佐々木監督は「(頭の中で)ルールが飛んでいた」と、苦笑して振り返るしかなかった。