昨夏準優勝の北海(南北海道)は神戸国際大付と対戦。4-2の7回1死一、三塁、4回から救援登板したエース多間隼介(3年)が、神戸国際大付の6番谷口に2打席連発となる右越え逆転3ランを浴びた。左腕でチームをけん引してきた大黒柱が聖地で力尽きた。

 誰もが信頼した多間でも、抑えることができなかった。4-2と2点リードの7回1死一、三塁、神戸国際大付・谷口に投じた初球を、右翼ポール際まで運ばれた。「ボールでもいいと思って突いた低めを持って行かれた。僕の力不足」。6回先頭で対峙(たいじ)した際は初球の甘く浮いた球を左中間に運ばれた。慎重に、外角ぎりぎりを突いた球をはね返され、完敗を認めるしかなかった。

 立ち上がりでペースを握ったはずだった。2-1の4回2死満塁、満を持して先発阪口からエース多間に継投。しっかり後続を断ってリードを守った。南北海道大会決勝でも2回途中からロングリリーフし3連覇を引き寄せた阪口-多間の必勝リレーが通じなかった。平川敦監督(46)は「1球の怖さ。ただ、あの球を右に持って行かれたら打者を褒めるしかない。相手が上。選手は良くやってくれたし勝たせてあげられず申し訳ない」と振り返った。

 敗れはしたが、どん底からはい上がり、北海らしい粘り強さを披露して散った。エース大西(現慶大)を擁して昨夏準優勝も、直後の秋季大会は地区初戦で敗退した。鈴木大和中堅手(3年)は「甲子園経験者が7人もいる状況で、プレッシャーの方が大きかった」と打ち明けた。エース多間は今春、左肩を痛め春季大会も地区初戦敗退だった。2度の屈辱に耐え、平川監督が必死で阪口を鍛え、多間の復帰を待ち、いっぱいいっぱいでつかんだ甲子園。その成果は十分に出し切った。

 「まだ野球は大学で続けたいし、今日のこの負けを次の野球人生の糧にしたい。球速も、ここぞの制球力も含めてすべて」と多間。阪口は「ピンチの時こそ表情を変えずに投げろと言う大西さんの教え通り投げることができた」と、前を向いた。1球に負けた無念は来夏、後輩たちが晴らしに来る。【永野高輔】