旭川地区で、12年ぶりの北北海道大会出場を狙う旭川北が、富良野緑峰を11-0の5回コールドで下し、初戦を突破した。先発の今翔生(しょうき)投手(3年)が強い雨の中、ロジンバックとティッシュペーパーを巧みに使い分け、指先の滑りを抑えながら5回1安打無失点で8三振を奪う好投。
今が、悪コンディションの中、アイデアを駆使した投球で、富良野緑峰打線を封じた。雨が降る中で始まった試合。水はけの良い旭川スタルヒン球場ですら、徐々にグラウンド上に水がたまり出す状況の中、こだわりを捨て、勝つための策に徹した。
「コントロールしにくいので、制球力で勝負しようと思ったけど、しっかり腕を振って、球威で勝負した方がいいと切り替えました」。最速132キロの直球主体で、ぐいぐい押し、5回まで毎回の8三振、すべて空振りで奪った。終盤は雨が強くなり本塁もよく見えない中「最後はキャッチャーのミットだけを見て投げました」と振り返った。
お尻には、今を助けるアイテムが秘められていた。利き腕のある右の尻ポケットには滑り止めのロジンバック。左にはティッシュペーパーを差し込み、マウンドに上がった。「指先に水がつくと気になるので、これで水分を取りながら投げていました」。水気を取り、ロジンで滑りを抑える。万全の2段構えで、1安打無失点の好投につなげた。
1年時からの下準備が、最後の夏に生きた。笹森敦監督(50)が「雨の日でも試合をやるときがあるから」と、雨天時のノックを始め3年目。今回が初の雨天試合だった。足場の悪いマウンドでの投球練習も経験していた今は「下半身をしっかり使うことが大事」と説明。この練習中に発案したティッシュ作戦も、大事な場面で生きた。
旭川北の校舎は、スタルヒン球場の隣にあるが、06年を最後に北大会に出場できていない。「教室からスタンドの応援が聞こえるんです。今年こそは、そんな寂しい思いはしたくない」。今が試合前、しっかりたたんで入れたティッシュは試合後、団子のように丸まっていた。疲れ果てた大事な“相棒”にそっと手を添えながら、12年ぶりの進撃を誓った。【永野高輔】