2回戦の星稜(石川)戦でのサイン盗み騒動を乗り越え、習志野(千葉)が初のベスト4に進出した。2回からマウンドに上がったエース右腕の飯塚脩人(3年)が緩急をつけた投球で8回を4安打9奪三振。打線は持ち前の機動力野球を展開し、勝負強さを見せつけた。大舞台でチームが1つにまとまった陰には、けがで欠場した“ダブル主将”根本翔吾外野手(3年)の存在があった。

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習志野の「背番号8」根本はベンチの最前列に立ち大きな声で選手たちを鼓舞し続けた。「その調子!」「落ち着いて!」2回戦で右足足関節を打撲し、無念の欠場。「チームのためにできるのは声しかない」。竹縄とのダブル主将の役割をベンチで全うした。

根本の声に、チームがまとまった。代わりに3番に入った角田は5回、投手強襲の適時内野安打で反撃の一手を打った。「根本さんが、チャンスで回ってくるぞと声をかけてくれた」。3安打2打点で期待に応えた。

エース飯塚は、気持ちの入った投球で流れを呼び込んだ。2点を追う2回にマウンドへ。2人目の打者を自己最速の146キロの直球で三振に打ち取り、波に乗った。3試合連続の無失点投球。8回裏には左足内側に打球を受けたが、ベンチで真っ先に肩を貸してくれた根本の励ましを支えに踏ん張った。6回には「ここで打ったら楽になる」と自らのバットで同点打。投打で逆転の立役者となった。

前日のミーティング、竹縄が「次も勝って、根本をグラウンドに立たせよう」と言った。昨秋チームNO・1の10打点をたたき出した主軸不在の大きさは、誰もが理解していた。それだけではない。サイン盗み騒動もあった。劣勢の中での戦いとなったが、竹縄は「僕たちは何もしていない。いつも通りやろう」とナインを鼓舞し、気持ちを1つにした。「最後まであきらめない」のが今年の習志野の強さだ。新チームから上下関係を廃止。何でも言い合える関係をつくり、粘り強く勝ち進んできた。「自分たちらしく戦う」と誓い、試合に臨んだ。

初のベスト4進出に根本は「いい仲間をもったなぁと…」と目を潤ませた。頂点へあと2つ。全員で駆け上がる。【保坂淑子】