幕切れの瞬間、東日本国際大昌平・村上椋音(りおん)投手(3年)は、野球人生最大のガッツポーズで喜んだ。「自然に出ちゃいました」。背番号19の144キロ右腕が、公式戦初完投で初優勝に導いた。

屈辱をバネにはい上がった。昨秋の地区大会磐城戦で10-0の7回裏から登板も、大乱調で一気に同点とされ降板した。速球派の宿命で指にまめができやすい体質にも悩まされた。「気持ちが弱いので直さなければ」。意識改革の第1歩として意識的に声と感情を出すことにした。ラストシーンは変身の証しだった。

プロ野球の巨人などでプレーし就任4年目の伊藤博康監督(49)は、菊地雅久斗、村上、藤井玲衣の3年生トリオに18、19、20の瀬戸際ナンバーを与え奮起を促した。「本来は3人でエースを争ってほしい」。今大会で3人が結果を出した。2回戦で聖光学院、準決勝で日大東北、そして決勝では学法石川を撃破。「平成の福島を支えてきた3校に勝てたのは大きい。2年前の4強を超えたい」と東北大会をにらむ。令和初タイトルを自信に夏への階段を上がる。【野上伸悟】

 

○…学法石川が1点に泣き12年ぶりの優勝を逃した。2回に先制しながら、3回に失策もからみ逆転を許した。7年ぶりの東北大会に向けて佐々木順一朗監督(59)は「県はたくさん試合をすることを目標にしてきて、決勝まで来られたのでよかった。東北では勝ちにいってプレッシャーのかかる中での試合を経験させたい」と語った。

○…日大東北が5年ぶり11回目の東北切符を死守した。磯上航希投手(3年)が、3回に先制されながら粘りの投球で7安打10三振1失点の完投勝利。準決勝の東日本国際大戦では連投を回避し中堅手で出場し敗れた。「今日は何が何でも絶対に完投して抑えたいと思っていた」とエースの自覚十分の投球を披露した。