背番号8を付けた日大山形の「二刀流」橋本魁投手兼外野手(3年)が、投打で勝利を導いた。

7回表、山形南に1点差に追い詰められると、中堅の守備位置から肩をグルグル回した。荒木準也監督(47)のゴーサインに投球練習もないまま、走ってマウンドへ。1死一塁のピンチを三振、投ゴロで封じた。「監督からは『いきなりでも行くぞ』と、いつも言われています。イニング間に外野同士のキャッチボールで準備しています。しっかり抑えられて良かった」と相手の勢いを絶った。

打撃でも3回に貴重な適時打。「あれは凡フライです」と謙遜したが、体勢を崩しながらも、中前にポトリと落とした。昨秋は背番号1をつけたが、羽黒との県大会3回戦で“事故”。試合前のキャッチボール中に隣の仲間のボールが顔面直撃。先発マウンドに上がる予定が、病院へ直行した。入院や手術は回避できたが右ほお骨折で約2カ月間の安静。「みんなの優しさ、仲の良さをあらためて感じた。下級生を含めたみんなで甲子園に行きたい気持ちが強まりました」。執念で8強進出を決めた。

荒木監督も「橋本はキーマンになる。切り札ですね」と期待を寄せる。先発した田中大聖(3年)、2番手の庄司由乃(3年)を含めて投手陣は総力戦。二刀流右腕は「夏は負けたら終わりの世界。肩がぶっ壊れるまで投げて勝ちたいです」。昨春のセンバツ出場の経験も生かし、投打でフル回転する。【鎌田直秀】