山梨学院が東海大甲府との大接戦を5-4で制し、4年連続9度目の甲子園出場を決めた。4番に座った菅野秀斗内野手(3年)が先制2ランを放つなど、相手エースを攻略。チームをけん引した。春センバツでも1試合5安打の固め打ちを見せたスラッガーが、この夏も全国の舞台で躍動する。

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前日に4番を任されることを伝えられていた菅野はただ1点に集中していた。「僕はトップの位置が決まるか、決まらないかで、その日打てるかどうかが決まるんです」。打席で投手が投げる瞬間の構えが、ピタリと決まるかどうか。決勝当日の朝、そのトップの位置が決まった。

「朝のフリー打撃の2周目で決まりました。しっくりきました」

もう怖いものはない。山梨NO・1右腕、加藤匠投手(3年)を意識することなく、打ち抜いた。初回2死一塁。相沢利俊投手(3年)を一塁に置いて、135キロの直球を捉えた。右翼への先制2ラン。「加藤は連投の疲れもあったのかもしれません。いつもより走ってないと、岸本が声をかけてくれたので」。自分のフォームが決まれば、相手どうこうじゃない。そこが菅野の強みでもある。

逆転されて迎えた3回には、再び中越えのフェンス直撃三塁打で試合を振り出しに戻した。6回には中前打。二塁打が出ればサイクル安打達成だったが「知りませんでした。さっき言われて気づきました」と、強心臓ぶりを印象づけた。

吉田洸二監督(50)は菅野の4番起用を「加藤君相手なら菅野が爆発しないと。他の子では厳しいかなと」と説明した。センバツの札幌第一戦の5安打で全国に名を売った。夏の目標を聞くと「(安打)2本以上です」と即答。この夏も強力打線をけん引する気配が漂う。

プレッシャーや記録には無頓着だが、打撃フォームに関する繊細な感覚は大事にする。「肩から背中にかけて、バットを構えた時にフィットする感覚が大事なんです。それは毎日違うんです。だから、いっつもそこばかり考えてます」。コンディションを完璧に仕上げて打席に入る。打つべくして打つ。この日4番にすえた吉田監督の狙いを、あっさりやってのけた。【井上真】

▽相沢利俊投手(3年=救援を仰ぎ試合後は涙を流す)「ふがいないピッチングをしたのに、みんなが打ってくれて、守ってくれた。感謝の気持ちが強いです」

▽野村健太外野手(3年=6回には右前打つで逆転のホームを踏む)「ヒットで出て逆転のホームが踏めた。そういうチームプレーができたのが成長した部分だと思います」

▽栗田勇雅捕手(2年=2回にはタイムリーエラーも6回に再逆転のタイムリー)「泣きたいくらいにうれしかった。チームに迷惑ばかりかけていましたから」

◆山梨学院 1956年(昭31)創立の私立校。普通科に特進コース、進学コースがあり、生徒数は1011人(女子434人)。野球部は57年に創部。部員数94人。甲子園出場は春3度、夏は9度目。主なOBは元巨人松本哲也ら。所在地は甲府市酒折3の3の1。山内紀幸校長。