古豪復活だ! 春夏7度の全国優勝を誇る広島商が29日、マツダスタジアムで行われた第101回全国高校野球広島大会を制し、15年ぶり23度目の夏甲子園出場を決めた。

初回から伝統の機動力野球全開で先制すると、3回に打者一巡の猛攻。天井一輝外野手(3年)、北田勇翔内野手(3年)の1、2番コンビが計3安打4盗塁4得点で聖地への道筋をつけた。120年の歴史を持つ古豪が大正、昭和、平成、そして令和と4元号で甲子園出場だ。

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甲子園出場決定も、マウンドに歓喜の輪はできなかった。相手を敬うのもまた、広島商の伝統。あふれ出そうな感情を抑えながらナインは最後の整列をつくった。最大10点リードから尾道に追い上げられながらも、堅守で逃げ切った。無失策5盗塁。尾道よりも少ない8安打で10得点。創部120年の古豪が持ち味を発揮して、15年ぶり23度目の夏甲子園出場を決めた。

試合終了直後、荒谷忠勝監督(42)は人目もはばからず泣いた。「暑いので…」。涙と認めず汗のせいにしたが、「3年生のためにも勝たせてあげたい。応援する保護者の方々のためにも…。体現した選手の成長にこみ上げるものがあった」。昨春に不祥事が発覚し、昨夏に監督に就任。伝統を重んじながらも選手の個性を伸ばす指導で立て直した。

決勝で勝利への道筋をつくったのは“広商野球”の体現者である1、2番コンビだった。1回、1番天井が初球を投手強襲安打にすると、2番北田の初球に二盗。1死一、三塁からは北田が二盗。ともに適時失策で本塁を踏んで2点を先制した。3回も再び二盗の天井が北田の二遊間のゴロに遊撃手がダイビングキャッチ(結果は内野安打)。その動きに迷わず三塁を蹴って、本塁に滑り込んだ。打者一巡でこの回8得点の猛攻を呼んだ。

走塁練習はより実戦を重視。野手がファンブルすることを常に想定している。天井と北田は中学時代から同じチームでプレーし、天井は「特長は分かっている。小技ができますし、信頼しています」と連係に胸を張る。同じ商業科で体育の授業は一緒に受けている。50メートル走もそろって6秒0。この日2人の4盗塁はすべて初球に奪ったもの。チームに勢いとリズムを与えた。

目標はあくまで全国制覇。荒谷監督は「その目標がなければ、今日という日はなかったと思う。(予選突破は)あくまで通過点」と胸を張る。大正から、昭和、平成。いずれの元号でも甲子園出場を果たし、平成以外では優勝を経験。令和初の甲子園に、古豪が帰ってくる。【前原淳】