作新学院(栃木)が岡山学芸館を投打に圧倒し、県勢の春夏通算100勝目で8強に一番乗りした。先発の林勇成投手(3年)が8回2死まで無安打に抑えれば、打線は初回から6イニング連続得点。8回も8得点と爆発し、計19安打18得点で大勝した。18得点は12年2回戦(立正大淞南)の19得点に次ぐ、栃木県勢では2番目。18点差は県勢最大差となった。18日の準々決勝は、中京学院大中京(岐阜)と戦う。

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甲子園は大歓声とどよめきに包まれた。林が投じた114球目。それまで低めに制球されていた球が高めに浮いた。「少しだけ体が突っ込んで投げてしまった。失投です」。打球は左前にポトリと落ちた。「打たれちゃったなーと思いました。悔しいですね」と苦笑いを浮かべた。

直球は130キロ台でもキレがあり、制球良くコースを突く投球でアウトを積み重ねた。記録は「7回くらいから頭にありました。もしかして自分も(松坂さんと同じ記録を)達成できるかも? そんな気持ちでした」と振り返った。

昨夏の甲子園の悔しさが大きく成長させた。初戦の大阪桐蔭戦、3番手で登板し1回2失点。藤原(現ロッテ)根尾(現中日)に連打を浴びた。「打ち取れなかったのが悔しい。配球に違う選択肢があったかもしれない」と何度も動画を見直した。苦しむ息子に、両親がプレゼントしたのは野村克也氏と野村克則氏の共著「高校球児に伝えたい!配球学・リード術」。しかも、偶然にも父、母が同じ本を購入。林は1冊を女房役の立石に渡し、2人とも熟読した。「外角一辺倒だと、広角に打てる打者は抑えられない。大胆かつ慎重さが必要」と打者に的を絞らせない投球術を手に入れた。息子を思う両親の愛情が後押しした。

趣味はロードバイクも、現在はマウンテンバイクで学校までの約8キロを通学。足腰も鍛えられた。父恭史さん(48)は「息子はチャリンコマニア。ロードバイクを買ってあげたいと思います」とご褒美を約束。林は「次まで四球が多かった点を修正して勝ち続けたい」。6四死球を反省し、成長を続ける。【保坂淑子】

▽作新学院・立石(林を好リード)「早い段階でノーヒットだとわかっていたけど、打たれるのは当たり前。何とも思わなかった。初戦よりも伸びはなかったが要所で抑えられました」

◆栃木県勢春夏100勝目 作新学院の勝利で栃木県勢が春夏通算100勝。100勝の学校別上位は(1)作新学院39勝(2)文星芸大付14勝(3)宇都宮工12勝。

◆林勇成(はやし・ゆうせい)2001年(平13)12月30日、栃木県生まれ。小3から津田スポーツで野球を始め、北犬飼中では硬式の上三川ボーイズに所属。中3でボーイズ選手権大会出場。作新学院では1年秋からベンチ入り。好きな言葉は「挑戦者は美しく、気高く、価値がある」。178センチ、80キロ。右投げ左打ち。