履正社が新たな歴史を紡いだ。今秋ドラフト候補の主砲・井上広大外野手(3年)の今大会2本目となる高校通算48号2ランなど、14安打9得点で高岡商を下し、初の夏8強に進出した。

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4万人の歓声を井上が独り占めした。3点リードの6回、「当たりは完璧でした」と99キロのカーブを捉え、左中間へ放り込んだ。地方大会から数えて今夏6本目で、目標の通算50発まであと2本。7回も2死満塁から2点適時打を放ち、2安打5打点の活躍に「4番として、最後に大事な場面で打てて満足できる試合」と大きな体で胸を張った。

「高校生外野手で1番」と評価される右の大砲。その長打力にはプロのスカウトだけでなく、後輩も熱視線を注ぐ。下級生から依頼されれば「井上塾」を開講。肘の使い方やバットの軌道を言葉や動作を交えて解説し、コマ送りで実践してみせる。スラッガー直伝の指導は「教え方が上手で丁寧」と好評だ。

「先輩越え」の夏になりつつある。井上は地方大会では4発を放ち、OB安田尚憲(現ロッテ)の高3夏の3発を抜き、山田哲人(現ヤクルト)を擁した10年のチームも果たせなかった夏8強。岡田龍生監督(58)も「4番として十分。あの本塁打が大きかった」と手放しで褒めた。履正社が初めて甲子園に出場してから22年。初の春夏連続出場と、立て続けに歴史をつくってきた。井上は「ここまで来たら日本一しかない」。主砲の1発があれば、初Vへの物語は終わらない。【望月千草】