八戸学院光星(青森)が今春センバツ4強の明石商(兵庫)に6-7で敗れ、12年以来の準決勝進出を逃した。

9回裏2死二塁、プロ注目でU18高校日本代表候補の武岡龍世内野手(3年)が右飛に倒れ、夏が終わった。2回までに6失点。大江拓輝外野手(3年)の中前2点適時打などで1度は同点に追いつくも、終盤の好機を生かせなかった。8回表には3番手登板の右腕・山田怜卓(3年)が暴投で決勝点を献上。最後は1点に泣いたが、下山昂大内野手(3年)の開幕戦満塁弾に象徴される強力打線は、全国の強豪に猛威を振るった。

   ◇   ◇   ◇

武岡主将は目を真っ赤にし、3度目の聖地と苦楽をともにした仲間に頭を下げた。「自分についてきてくれたみんなに感謝です。人生で一番楽しい時間をもらえたので感謝しかない」。開幕戦以降、3戦連続2ケタ安打で8強入りした強力打線。常に支えてくれた仲間の父母らから「スター」と呼ばれる男が、6打数無安打では流れを完全には引き寄せられなかった。

今春センバツ初戦の広陵(広島)に3安打完封負けを喫してから、打撃に対する意識がガラリと変わった。長短を織り交ぜた徹底した走り込みで下半身を鍛え、以前から取り組んでいた体幹トレーニングは全員で汗だくになるまで、練習前に毎日続けた。短期間で体も大きくなり、打球の強さも増した。結果にこだわる意識向上のため、各選手が練習試合や公式戦の打撃成績を細かく計算し、数字を把握。内容はもちろん、数字にこだわって切磋琢磨(せっさたくま)する競争心も磨いた。

武岡も弱点だった内角克服へ、昨秋までのオープンスタンスに戻すなど模索した。青森大会序盤は不振を極めたが、甲子園に合わせるかのように、本来の姿を取り戻したかのように見えた。智弁学園戦では春夏通算3度目の甲子園で初本塁打。「そこからインコースを攻められ始めて、腰が引けてしまった」。6-7の9回裏2死二塁の同点機。力ない右飛に「負けた」とつぶやき、天を仰いだ。

精神面の成長は自信を持てた最後の夏だった。本来は多くを語らず、背中で引っ張るタイプ。「主将になって性格とかも変えて、大きな声をみんなにかけられるようにもなった。キャプテンをやらせてもらえて良かった」。遊撃の守備中もプレーと声で鼓舞し、仲間からも「武岡だから個性の強い自分たちをまとめられた」と感謝された。

徳島を離れて、青森での高校野球を決断した際、中学で所属した徳島ホークスの仲間と甲子園での再会を約束していた。だが、同期11人中、今夏の聖地にたどりついたのは武岡1人だけ。創志学園のプロ注目右腕・西純矢(3年)の球を受け、岡山大会準決勝で敗退した横関隼捕手(3年)ら仲間の期待も背負っていた。開幕戦の6日、応援席での“同窓会”からの声は、力になった。「小、中の仲間を代表して日本一になりたかった。両親にも恩返ししたかった」。過程には一定の満足感は得たが、結果は悔いた。

今後は今月末のU18日本代表合宿に招集される可能性もある。国体出場も決まった。「国体で優勝したい。そしてプロ野球選手になることも目標。(プロ志望届は)出します」と今秋のドラフト指名が次の夢の第1歩になる。

近藤遼一内野手(3年)、太山皓仁捕手(3年)、下山が本塁打を放った今大会。この日も最大5点差を追いつくなど、地元八戸港で漁獲量の多い特産品にちなんだ「サメ打線」は、最後まで好投手に食らいついた。武岡は「胸を張って青森に帰りたい」。右ポケットに入れた甲子園の土と、好機での1本の課題が土産。目標とする先輩、巨人坂本勇人内野手(30)の背中を追い続ける。【鎌田直秀】