履正社・野口海音捕手が日本一の主将になった。同じ捕手、主将で仲のいい星稜・山瀬と帽子を交換。真ん中に並んでドヤ顔で記念写真に収まった。センバツ後「次は絶対負けへんからな」と宣戦布告していた。戦いを終え「また、お互い頑張ろうな」と誓い合った。

2点差を追いつかれた直後の8回1死三塁で外角151キロを中前にはじき返した。これが決勝点。もう1点加え、奥川に引導を渡した。「対策していたことがあの回に出ました」と会心の一打に胸を張った。

原点は昨夏の北大阪大会準決勝。大阪桐蔭にあと1アウトから逆転された。マスクをかぶっていた野口は「1球で流れが変わるのを目撃した」。粘り負け、投手が相手の流れにのみ込まれていく怖さ。後悔はもうしない。7回は同点にされたあと、必死に2年生岩崎を身ぶり手ぶりで叱咤(しった)し、勝ち越しは許さなかった。

「当たり前のことを当たり前にする」と主将として背中を見せ続け、ゴミ拾いやシューズの整理を率先してきた。優しい性格の男が、嫌われてもナインに小言を言い続けた。いつしか誰もが認める「野口のチーム」になった。

「海音(みのん)」はスキューバダイビングのインストラクターの父に名付けられた。自身も幼少時から海の世界を楽しんできた。そんな海の男が、灼熱(しゃくねつ)の黒土で一番輝いた。【柏原誠】