中越(新潟)をけん引するのは、主将の広瀬航大内野手(3年)だ。一昨年夏の甲子園、慶応(神奈川)との1回戦では1年生ながら7番二塁手でスタメン出場し2安打。現チームでただ1人、甲子園でプレーしている。新型コロナウイルスの影響で、今夏の甲子園が中止になった後も高い意識でチームをまとめてきた。中越での高校野球の集大成として、2年ぶりの“王座”奪還を狙う。

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バットを振り抜くたびに、打撃練習中の広瀬の表情は厳しくなっていった。豪快なスイングでのティー打撃は力強く的確にボールをとらえ続ける。シート打撃ではフルスイングで外野に運んだ。

19日の初戦(2回戦)の相手、三条とは6月27日に練習試合を行って11-5で勝利。3番に座った広瀬は4打数3安打で、二塁打2本を放った。「どこと対戦しても前を向いてやるだけ」。好調を実感しながらも気を引き締める。

夏季大会は完全燃焼する場。「今までやってきたことが間違っていなかったと証明したい」。一昨年夏の甲子園1回戦、チームが慶応に2-3でサヨナラ負けする中、1年生だった広瀬は左前安打2本と気を吐いた。「全国」を肌で感じ、以来、全国制覇が目標になった。ただ、その後は不運続き。昨春は練習試合で死球を受け左足首を負傷した。主将に就任した昨秋は右股関節の疲労骨折で1試合の出場にとどまった。

発揮できていなかった力を見せる場になる夏季大会は、甲子園にはつながらない。それでも、「試合ができることがうれしい」。春季県大会中止後の部活自粛中はチームメートに自分から連絡を取って士気を高めた。1年秋から行ってきた食事の増量と筋トレの成果が出て、この2年間で体重は12キロアップ。本田仁哉監督(43)は「体力がついた分、打球も力強くなった」と成長を認める。

「やるからには優勝」。それがチームの夏季大会の目標であり、広瀬自身の高校野球の終わりを飾る最高の結果。「やり通して、下級生につなげたい」。積み重ねてきたものを出し切ることをテーマに据えた。【斎藤慎一郎】

◆広瀬航大(ひろせ・こうだい)2002年(平14)11月27日生まれ、燕市出身。分水北小1年で軟式野球を始める。分水中では少年硬式野球の新潟シニアに所属し、投手と内野手。2年生の時に全国選抜大会に出場。中越では1年夏からベンチ入り。178センチ、78キロ。右投げ左打ち。