特別な夏が始まった。夏季北海道高校野球大会は11日、函館地区で開幕した。

開幕試合は大野農・八雲・七飯の渡島連合が函館水産に6-5で競り勝ち、北海道の20年1勝一番乗りとなった。七飯の右腕、近藤結斗(3年)が9回155球を投げ5失点も、10三振を奪い完投。打っては同じ七飯の木田陽久二塁手(3年)が同点の9回2死満塁で勝ち越し2点適時左前打を放ち、勝利に導いた。

   ◇   ◇   ◇

保護者、控え部員以外は無観客の函館千代台公園に、3校を代表し七飯の校歌が響き渡った。9回155球を投げ完投した連合のエース右腕、七飯・近藤は声を張り上げ熱唱した。「試合ができることがうれしい。昨秋は初戦で負けて歌えなかった。最後の夏に歌えて良かった」と喜んだ。同点に追い付かれた直後の9回表に決勝打を放った木田も「近藤が頑張って投げていたので、なんとか1本打てて良かった」と笑顔を見せた。

最後まで、冷や冷やだった。9回裏1点差に追い上げられ、さらに1死二、三塁のピンチ。近藤は最後の打者を二ゴロに打ち取ると、空を見上げ安堵(あんど)の表情を見せた。長短15安打を浴びながらも、10奪三振で粘った。七飯の佐藤駿哉捕手(3年)に頭をわしづかみされ苦笑い。同じ3チーム連合で挑んだ昨秋の地区初戦は、全道大会に出場した函館工に7回まで1点リードも、8回につかまり4失点で逆転負けした。近藤は「今回は佐藤が何回も声をかけにきてくれたので、最後まで落ち着いて投げきることができた」と振り返った。

今春以降、3チームでの練習は6月20日の練習試合が最初。この日まで計5度の練習試合だけが連合での活動だった。それでも昨秋から3チームでグループラインをつくっており、コロナ自粛期間も互いに動画をアップして助言し合うなど情報を共有。近藤は「連合だけど、みんな分かり合った仲間」と強調した。

指揮を執ったのは大野農の工藤拓郎監督(26)、ベンチ上に掲げた旗は八雲、校歌は七飯。八雲の石川伊吹左翼手(3年)は6回に右越え適時三塁打、大野農の佐藤昌弥遊撃手(3年)は4打数2安打で、9回には決勝の生還も果たした。工藤監督は「全員が勝ちにいくんだという気持ちがつながった。みんなで取り組んだ成果が出せた」。“3本の矢”でつかんだ1勝を足掛かりに、さらに高みを目指す。【永野高輔】

○…全道10地区で最初の開催となった道高野連函館地区事務局は、念入りな感染予防対策を行った。原則無観客も保護者と控え部員には入場を認めた。開幕前までに出場全チームに観戦希望の保護者名簿を提出させ、入場前には選手名と保護者名をカードに記入してから入場するよう徹底。ベンチ入り選手、スタッフには全員、試合前々日から2日分の検温表提出を義務付けた。また球場の10箇所に消毒液を配置し、試合の合間にはベンチ内を消毒。同事務局では「できることはすべてやって、安全な形で運営したい」と話した。