<高校野球西東京大会:三鷹中教高7-0穎明館>◇19日◇1回戦◇多摩一本杉球場

試合の裏に、高校野球ならではのドラマがあります。「心の栄冠」と題し、随時紹介します。

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願いが届いた。7点を追う穎明館(西東京)の9回の攻撃も2死走者なし。三塁コーチに立った主将の若林蒼一郎遊撃手(3年)は「打てー!」と声を張り上げた。すると、釜土隼輔右翼手(3年)が公式戦初安打となる中前打。次打者が倒れ敗れたが、釜土のしぶとい打球を見て「まだ終わってないのに、泣いちゃいました」と感極まった。

昨夏に1つ上が引退し部員8人に。若林はただ1人の最上級生だった。「もう、やめよう」とも考えた。だが、10月に中学野球部で一緒だった釜土が入部。「最後の夏は(連合ではなく)穎明館で若林を出してあげたい」。若林は「今後のためにも、穎明館野球部を残さないと」と思い直した。04年には西東京で準優勝したが、その後は中高完全一貫化の影響もあり部員減少。成績も低迷している。

若林は1度も公式戦で勝てなかった。望月拓磨監督(27)は「若林の妥協しない姿勢が、うちの野球部の布石になる」と願う。かつての強さを取り戻す転機の代とする。【古川真弥】