最高のいい顔で、野球をやろう-。東西東京大会は、いよいよシード校が登場。

西東京の名門・日大三は、27日に東京都市大等々力との初戦を迎える。16日には、小倉全由監督(63)がベンチ入りメンバー20人を発表し、背番号を手渡した。甲子園がない夏でも変わらない、熱い思いを語った。

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食堂に集まった部員たちの視線を浴びながら、小倉監督は口を開いた。「背番号を渡します。いいかな」。空気が張り詰める。1拍おき「背番号1、児玉。頼むぞ」。1人ずつ呼び、20番まで手渡していった。

「日大三高の代表ということを忘れないで。背番号は2ケタ、1ケタあるが、出た者が1ケタ。三高で練習したのは何だったんだ、という思いだけで終わってほしくない。この大会も甲子園と同じように熱くやろう。最高のいい顔でやろう。それがどんな顔かは分からない。涙になるか、笑顔になるか。でも、一番いい顔で終わろう」

大会前恒例の時間も、少し様相が違った。例年は、背番号が20に近づくにつれ、緊張が高まる。最後の夏にメンバーを外れた3年生たちの中には、むせび泣く者もいる。明暗を分ける日。小倉監督は「線を引けるのか。自分は嫌ですね」と本音を隠さない。今年は、試合ごとに登録メンバーが変更可能となった。熟慮し、まずは合宿所に入る3年生で臨むことにした。くしくも、ちょうど20人。全員がメンバー入りした。

初めて背番号を手にした3年生が5人いる。14番、橋本和真内野手は「(昨年)秋は(番号を)もらったのに(今回のメンバーに)入ってない2年生がいる。責任感があります」と後輩たちの心情を思い、口元を引き締めた。

小倉監督は「最後、熱く終わらなかったら絶対、自分の人生、悔いが残るぞ」と締めた。異例の涙なき背番号発表。それでも、夏に向かう熱量は変わらない。【古川真弥】