名寄地区は25日、代表決定戦が行われ、枝幸が大逆転で豊富を7-6で下し北北海道大会出場を決めた。士別翔雲は稚内大谷を9-5で下し、地区を突破した。

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豊富の初の道大会出場の夢は9回に5点差をひっくり返されて終わった。最後まで1人で投げ抜いたエース右腕、高瀬丈(3年)は「8回までは調子が良かったけど、9回に入って空気が変わった。相手の勢いに何を投げたら良いか分からなくなった」。試合後に淡々と話す姿は、かえって現実味のない出来事に直面したかのようだった。

18年春、休部状態の野球部に現3年生6人が加わった。他校に進学する道もあったが、鈴木快監督(34)と一緒に野球をすることを選んだ。部員0人だった17年。同監督は翌年以降の部活再開を目指し1人で黙々とグラウンドの石を拾い続けた。高瀬丈ら豊富小中の幼なじみたちはそんな姿を見て、全校生徒56人の小規模校で戦うことを誓った。

助っ人を加えて18年夏に6年ぶり単独出場を果たすと、昨年春には9年ぶり公式戦勝利。そして初の道大会へという夢は叶わなかった。この日、新ユニホームを着て新たな歴史を刻もうと意気込んでいた新野篤哉主将(3年)は「人として成長できる3年間だった」。指揮官が種をまき、水をやって、真剣に向き合った11人の選手たち。その基盤を作った6人の3年生は敗れてもなお、力強く育ち続ける。【浅水友輝】