ピッチングは単なるスピードだけじゃない。東京都市大等々力・広瀬風雅投手(2年)は、0-6の4回裏から2番手で登板した。強力打線が相手。4点追加されれば、5回表終了時でコールド負けの可能性もあった。「不安はありました」と正直に打ち明けた。

ところが、マウンドでは一変した。どろ~んとした大きなカーブを多投。ポップフライの山を築いた。4回を3者凡退。5回は犠飛で1点を失ったが、6回も無失点。7回1死から四球を出し降板したが、結局、3回1/3を投げ、1安打のみ。2失点だった。

敵将の日大三・小倉監督が「大きなカーブを、なかなか打てなかった。あれを狙わないと。ダメですね」と言えば、主将の渡辺も「思った以上に緩い球で。みんな苦しんでました。引きつけて打とうとしたのですが」と認めた。想定を越える遅さも、また武器となることを証明した。

弱点を補うには? と考えたのが始まりだ。「ストレートは、そんなに速くないので、カーブとの球速差をどれだけつけるかを考えました」と広瀬。直球の最速115キロに対し、カーブは90キロほど。25キロ差で勝負する。以前は大きなカーブではなかった。「高校に入ってからです。どれだけバットの芯を外すかと考えました」。参考にしたのは、楽天岸。球界屈指のカーブの使い手の握りや腕の振りを研究し、遅球を磨いた。

もっとも、四球で残した走者をかえされ、チームは7回コールド負け。「できるだけ長く3年生と過ごしたかった。(登板時は)劣勢だったので助けたかったです」と悔しがった。新チームでは、他の投手とエースを争う。「(日大三相手の好投で)自信にはつながりますが、ストレートがだめ。秋から磨きたいです」と誓った。【古川真弥】