伊香のプロ注目右腕・隼瀬一樹投手(3年)は登板しないまま初戦で姿を消した。背番号10をつけてベンチスタート。7点ビハインドの8回に代打で出場して左翼線へ意地の安打を放ち、その後は一塁守備で終えた。

小島義博監督(34)は「隼瀬より藤井の方が調子が良かったので」と藤井大智投手(3年)を先発起用。今大会は投球制限があることから、この試合で隼瀬を登板させる予定はなかったという。昨秋の県大会で23年ぶりの4強進出に貢献した隼瀬は「昨秋のような投球ができていない」とけがではなく制球、球速などが本調子でなかったと明かした。伊香はセンバツ21世紀枠候補校に選出されて注目を集めた。しかし、その後は今春の県大会や夏の甲子園大会が中止。「激動の1年、長くてつらかった」。ここまでの道のりを涙を浮かべて振り返り、この夏に代替大会を戦えたこと感謝した。

試合後、真っ赤な目をして仲間の肩を抱いた隼瀬は、進路についてプロ志望届を提出することを改めて明言。プロを目指す高校3年生による「プロ志望高校生合同練習会」(8月29、30日=甲子園、9月5、6日=東京ドーム)に向けて動きだすと意欲を示した。次を見据えるその目にはもう涙はなかった。隼瀬の野球人生はまだ続く。【平井稀花】