<高校野球群馬大会:利根商7-0渋川>◇23日◇準々決勝◇上毛新聞敷島球場

渋川の鈴木一朗内野手(3年)は9年前の光景を覚えている。12年3月に東京ドームでメジャー開幕戦を観戦した。「打席に入る時が格好いいな」。見とれたのは自分と同姓同名のマリナーズ・イチロー(現マ軍会長付特別補佐兼インストラクター)。バットを右手で立ててから構えるルーティンが印象的だった。

名前の由来は、もちろんイチローだ。母由紀さん(45)は「メジャーに行った“鈴木一朗”と名付ければ、間違いなく成功する人になれるかなと思って」と、願いを込めた。

“上州のイチロー”とも縁がある。父友晶さん(47)が渋川中で野球の指導者をしていた時の教え子がオリックス後藤駿太外野手(28)。幼少期から慕い、イチロー観戦後に本格的に野球を始めるとアドバイスもたくさんもらった。後藤の高校時代の異名に負けじと「群馬のイチローになる」と言ったことも。今大会前も電話で激励された。

投手だった昨夏、投球中に疲労骨折。最後の夏に向けて野手として臨むことを決め、打席ではイチローのように右手でバットを立て始めた。最後の試合は3打数無安打。野球は高校で一区切りを付ける。名前のプレッシャーは「なかったです」。力強く、次の道へ進む。【木下大輔】