日本文理が7-3で新潟産大付を破り、19年に続く11度目の甲子園出場を決めた。

主将の4番渡辺暁仁左翼手(3年)が1回表無死満塁から左翼席に本塁打を放つ強烈な先制攻撃。大会全6試合2ケタの12安打の猛攻で7得点を挙げ、春県王者を突き放した。エースの田中晴也投手(2年)は9回裏に自己最速144キロも記録するなど8安打3失点で完投。投打に好調を維持し、夏の甲子園(8月9日開幕)に乗り込む。

   ◇   ◇   ◇

最後は左手1本だった。1回表無死満塁。4番渡辺は3球目の真ん中低めの直球をとらえた。体勢は崩された。それでも左腕を振りきった。「打った感触はフライかと思った」。左翼スタンドに打球が落ちる。二塁に向かう途中に本塁打を確認すると三塁側観客席の控え部員に向け、右手でガッツポーズ。「ボルテージが上がってうれしかった」。ベンチに戻ると、チームメートとのハイタッチが待っていた。

試合前、鈴木崇監督(40)は渡辺をキーマンに挙げていた。「バットに当たってくれれば」。決勝の1打席目でその期待に応えた。渡辺は準決勝までの5試合で19打数5安打5打点。2回戦の新発田中央戦で本塁打を放っているが、主軸として十分な働きはできていないと感じていた。その悔しさを払拭(ふっしょく)し、主将の、4番の意地も見せたかった。決勝でたたき込んだ2号にはその強い気持ちが乗っていた。

試合後のインタビューで、鈴木監督はベンチ入りしている3年生、三塁側観客席で応援していた控えの3年生に向け「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えた。今夏ノーシードだった。同じブロックには新発田中央、中越(出場辞退)、帝京長岡、関根学園と強豪校がそろっていた。昨秋県大会は準々決勝、今春の県大会は4回戦で敗れた。苦しい時期をベンチ入り、控え関係なく全員で乗り越え、夏に勝負をかけて挑んだ。1試合ごとに強さを増し、勝ち上がってきた。

中止の第102回大会(20年)を挟んで、19年に続く11度目の甲子園出場を勝ち取った。甲子園の過去最高成績は09年夏の準優勝。「09年に成し遂げられなかった全国制覇を果たし、新潟に優勝旗を持って帰りたい」。渡辺は堂々と言い切った。【飯嶋聡美】