今年のオフも、イチロー先生がやってきた。マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏(48)が29日、国学院久我山(東京)を訪れた。

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19年3月に現役引退し、20年2月に高校生、大学生の指導に必要な学生野球資格を回復。同12月の智弁和歌山に続く高校野球指導第2弾は、国学院久我山だった。きっかけは昨年、イチロー氏と当時2年生だった田村優樹外野手が知り合ったこと。同校は、コロナ禍で思うような練習ができない状況が続いていた。その後、2年生部員全員からイチロー氏の元に手紙が届いた。

「野球がうまくなりたいです。強くなりたいです。そのために来てほしいです」

そんな思いがこめられた内容だった。

田村外野手たちの代は今夏で現役を引退したが、後輩たちのためにも一緒にプレーする機会を設けて欲しいという思いが強かった。それにイチロー氏が応え、今回の訪問が実現した。

国学院久我山は今秋の東京大会で優勝し、来春のセンバツ出場を確実にしている。

▽国学院久我山・上田太陽主将 イチローさんが今日来ると知らされていなかったので、びっくりしました。1人だけ輝いて見えました。(オーラが)全然違いました。世界と戦ってきた選手、日本を代表する選手だと思うので、走塁や、バッティングのアドバイスを聞けてすごくいい経験になりました。センバツもあるけど、自分たちの目標は夏の甲子園ベスト8。そこに向かって行く中で、イチローさんが来てくださったのは力になる。生かしていきたい。

▽国学院久我山・尾崎直輝監督 本当に生きてて良かったと思いますし、こうやって学ばせて頂けることが幸せです。私は31歳ですが、オリックスが優勝されたとき、オリックスの帽子をかぶって登校していました。イチローさんと田口さんは憧れでした。そこから野球がどんどんスタートしていった。たまたまですが教員、監督をやらせてもらって、イチローさんにまた会える。すごいですよね。こんな人生もあるんだなと。

▽国学院久我山・田村優樹外野手(昨年3月、イチロー氏と知り合い、訪問のきっかけに)「後輩たちも同じ全国制覇という目標に向かって一緒に頑張ってきた仲間。そういった面でプラスになってくれれば。自分も大学で野球をやるので、刺激を受けて、技術的な面もしっかり学びました」

◆イチロー氏の智弁和歌山指導 昨年12月に3日間の日程で行った。初日は「観察」、2日目から徐々に指導を開始し、最終日には実際にフリー打撃も披露した。「盗塁はスタートで決まります」と走塁技術を伝えたほか、「筋肉が緊張するとパフォーマンスが下がるのでそれを避けたい。打撃でもリリースポイントだけを見ると緊張する。全体を見ようとすること」とアドバイスを送った。最後はオフのメニューを自分たちで決めさせ、「ちゃんとやってよ」と一言。今夏の甲子園前にも「ちゃんと見てるよ」とメッセージを届け、チームは21年ぶりの頂点に立った。

指導を受けた選手の中には、当時3年生だった広島小林、日本ハム細川がいる。小林は11月に先発で1軍デビュー(勝敗つかず)。細川も10月8日のデビュー戦で初安打を放つなど9試合に出場し、プロのキャリアをスタートさせた。