1回裏の攻撃だった。1点を先制し、なお2死三塁。東京学館新潟の追加点のチャンスで「もう1点」と盛り上がるベンチに向かい、肩を慣らしていたエース羽吹が声を掛けた。「1点だけでいい」。余分な力が入るナインへの配慮だった。

「点が入らなかった場合、雰囲気が悪くなる。和らげる意味で言った。もともとチームは9回までに1点でも勝っていればいいという考えです」。

その1-0からの均衡を破ったのが羽吹のバットだった。4回裏に先頭打者として右前打。「(表の)3者凡退を作った回だったから、先頭で出たい」。好調な投球をバットに移し、打線の勢いも呼び込んだ。この回、6長短打で5点を奪った。旅川佑介監督(40)は「しっかりしている子」と羽吹を評した。

5回を投げて2安打無失点。「立ち上がりは捕手の構えるところに投げ込めなかった」も無失点でエースの役割を果たした。春のエース中町龍之介投手(3年)は右肘故障から今夏、マウンドに復帰する予定。「入学時は頭ひとつ、ふたつ抜けていた」と同僚を評す羽吹は「中町が活躍する舞台へ、バトンをつなぐために全力で投げる」と言った。【涌井幹雄】