<高校野球奈良大会:高田商7-5畝傍>◇17日◇3回戦◇佐藤薬品スタジアム
高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。
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再びの敗戦に涙が止まらなかった。畝傍は13安打5得点で高田商に2点差まで迫ったが、あと1歩届かなかった。山中健太郎内野手(3年)は「秋に負けてから勝つために練習してきた。悔しいです」と唇をかんだ。
高田商は昨秋の県大会3回戦で敗れた相手だった。さらに1番の東口虎雅(たいが)外野手(3年)は中学時代、桜井リトルシニアでともに戦った仲間。組み合わせが決まり、リベンジに燃えていた。
山中は4打数4安打1打点でチームをけん引。だが7回、気温30度超えの暑さで両足がつった。飲み物を手に猛ダッシュで駆け寄ったのは東口だった。慌ててベンチを飛び出し「ごめん、飲みかけ持ってきてもうた」と謝る東口に「なんでもええわ」と笑った。
最終打者の飛球に「入ってくれ」と願った目にはすでに涙があふれていた。それでも整列し、かつての仲間と顔を合わせると自然と笑みがこぼれた。「楽しい試合やった。ありがとう」。言葉を交わして抱き合った。
試合には敗れたが、4安打で「個人では勝てたかな」と胸を張る。「活躍して勝っていってほしい」。自らが果たせなかった聖地への思いを、最後は東口に託した。【村松万里子】

