6年前の再現へ、あと2勝とした。金足農(秋田)の2年生エースで、オリックス吉田輝星投手の弟・大輝(たいき)投手が準々決勝の本荘戦に先発し、6安打6奪三振で、2戦連続の完封勝利を飾った。兄は18年夏、同校エースで甲子園準V。強豪校を軒並み撃破し、社会現象にまでなった“カナノウ旋風”を巻き起こした。この日は猛暑の中で128球の熱投。最終回には兄が甲子園で一世を風靡(ふうび)したポーズを披露し、球場の雰囲気もガラリと変えた。
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シャキーン! 最終回の投球を前に、マウンド後方で片ひざをついて刀を抜くようなポーズを見せた。「最後の力を振り絞る」。そう吉田が拳を振り上げた瞬間、勝負は決したのかもしれない。中堅手の高橋佳佑外野手(3年)とアイコンタクトし、そろって右手を斜め上へ運んだ。
刀を抜くようなしぐさは6年前、旋風の中心にいた兄が行い話題になった。当時の記憶がよみがえったスタンドからは「行け~侍!」と拍手と大歓声。主将の高橋は「初戦でもやったんですけど、あんまり目立ってなくて。今日はゆっくりやろうと決めてました」とニンマリ。8回まで119球のエースはさらにギアを上げた。投球間隔はわずか4秒。「侍ポーズ」の余韻が残るうちに打者3人を斬り、接戦を締めた。
試合前は地に足がつかなかった。2試合を1人で投げ切っての8強。「期待がかかっている。足が震えていた」と重圧に加え、疲労で下半身も張っていた。それでも「観客の皆さんに応援してもらっている。期待に応えなきゃ」。太い足を強く踏み込んだ。底力での完封劇に、強打の本荘を率いる藤盛監督も「若干疲れがある感じで、捉えられるかなと思ったんですけど…」と脱帽するだけだった。
あの夏は、兄が接戦続きの秋田大会を全試合完投した。中泉一豊監督(45)は吉田の起用について「休ませたい気持ちもある。(次戦の先発は)考えます」としたが、当の本人は「投げる体力は誰にも負けない。兄は全部投げて優勝してるので、そこは負けたくない」と譲るつもりはない。6年の時を経て、輝星とうり二つの大輝が再び夏の主役へと躍り出る。【黒須亮】

