国境を越えた「二刀流」への挑戦が始まっている。盛岡大付の台湾出身、許定捷(きょ・ていしょう、2年)外野手が盛岡商戦に「2番中堅」で出場し、2安打2打点。投げては3番手で登板し、3回無失点の好救援で岩手大会出場に導いた。敗者復活代表戦では盛岡市立が平舘に10-0の5回コールド勝ち。岩手大会切符まであと2勝とした。
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闘志みなぎる表情でマウンドに向かう盛岡大付の許は、出番を待っていたかのようだった。8-3の7回無死二、三塁で登板。中前適時打を許したが「1点は仕方ない」と冷静だった。後続は得意のスライダーで2者連続三振を奪うなど、最少失点で切り抜けた。8回には2者連続四球などで1死満塁とピンチを迎えたが「自分が招いたピンチなので、絶対に0で抑える気持ちでした」と有言実行で無失点。反撃ムードをしっかりと断ち切った。
「日本のプロ野球選手になりたい」。中学時代、U15台湾代表に選出された。だが、夢をかなえるため、生まれ育った故郷に別れを告げ、海を渡る決断をした。言語も文化も違う異国への挑戦。「正直、不安でいっぱいでした」と吐露するが、憧れの存在が原動力となった。「大谷選手のようになりたい」。異国の地で活躍する大スターを生んだ岩手で、日本の高校野球の門をたたいた。
言葉の壁に苦戦する日々に手を差し伸べたのはチームメートだった。「ミーティングで難しい言葉が出ると、みんなが時間をかけて教えてくれました」。練習後には寮で毎日1時間、日本語の勉強をした。日本語ドリルを購入し、ひたすらペンを走らせた。今ではチームメートとの談笑も楽しみのひとつ。仲間の存在と地道な努力が身を結んだ。
目標は投打「二刀流」だ。高校では強肩を評価され、内野手から外野手へ転向。さらに、中1から経験のあった投手も並行している。だが、許の中にあるのは、ただひとつ。「大谷選手のように二刀流になりたいので、投手で勝負したい」。現在は背番号11だが、エース番号奪取にも闘志を燃やす。大スターを生んだ岩手から、遠く離れた故郷にも活躍を響かせるつもりだ。【木村有優】

