<高校野球佐賀大会:佐賀工8-1佐賀農>◇17日◇3回戦

 伝統のユニホーム「Sako」の文字を汚すわけにはいかない。3度目の夏切符を目指す古豪、佐賀工が佐賀農を7回コールドで下し、2年ぶりに8強入りした。左肘の靱帯(じんたい)損傷から復帰した“左腕エース”平川裕貴外野手(3年)が投打で貢献した。

 頼れる“左腕エース”は健在だった。平川は4月の練習試合で左肘の靱帯を損傷して以来、懸命のリハビリを経て3カ月ぶりに先発復帰した。しかし、130キロ台前半の直球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーションで翻弄(ほんろう)する投球術はまったく鈍っていなかった。

 1回に3者連続三振を奪うなど、5回1安打無失点。打ってもチーム唯一の適時三塁打を放つなど、4打数3安打1打点と投打に活躍した。

 久々の登板に「迷惑をかけてきたので、早く治してチームに戻りたかった。投げるからには負けられない。ホッとしています」と安堵(あんど)した。エース右腕、石丸将和(3年)と両輪を成していた平川の登板が計算できるようになった。唐津西、佐賀東で計3度、夏の甲子園に出場している名将、吉丸信監督(56)も「平川の復帰は収穫。戦力が整い、うちには追い風」と喜んだ。

 信頼して使ってくれた監督はもちろん、病院への送迎など献身的に支えてくれた両親に恩返しがしたかった。それだけではない。1年から着る新ユニホームの胸には復刻された伝統の「Sako」の文字が輝いている。恥じないプレーで応えたかった。

 この日、スタンドで応援した父敏彦さん(49)は「投げられないジレンマはかなりありました。不安もあったろうが、よく乗り越えてくれた」という。恩に報いるためにも、87年以来、3度目の夏出場を成し遂げてみせる。【菊川光一】