<高校野球大阪大会:東大阪大柏原7-6大阪桐蔭>◇1日◇決勝

 最後の代表は、春夏通じて初出場の東大阪大柏原に決まった。大阪桐蔭との大阪大会決勝で、9回1死満塁から押し出し死球によるサヨナラ勝ち。上宮(大阪)で93年センバツを制した田中秀昌監督(54)が率い、プロ注目の石川慎吾捕手(3年)らがそろう強力打線が、5点差をはね返した。これで第93回全国高校野球選手権大会の全49代表校が決定。明日3日に組み合わせ抽選会が行われ、6日に甲子園で開幕する。

 東大阪大柏原・石川慎が二塁ベース横に倒れ込んだ。9回1死満塁で山崎利起外野手(3年)の脇腹に死球。サヨナラ負けに崩れ落ちる大阪桐蔭ナインの近くで、二塁走者の石川慎も頭を抱えて泣いていた。「優勝して、田中監督に恩返ししたくて…。やっとやっとそれがかないました」。

 初回1死一、三塁で中前打を放ち先制した。「この1点は忘れよう。もっと点を取るんや!」と声をからした。最後まで攻め続ける一心だった。1-6の4回は先頭で左前打を放ち、2点目につなげた。相手に傾く流れを止めた。「あの2点目が大きかった。最後まであきらめない得点になった」と田中監督は振り返る。

 小5のとき、少年野球の恩師を亡くした。高1の春、またかけがえのない人に巡り合った。田中監督だった。「お前にはハートがある」と1年夏から中軸に起用。3年になり「プロを目指したい」と打ち明けたときも「お前は自分の言葉でものを言える子や。大丈夫や」と背中を押してくれた。

 その田中監督に2回戦・城東工科戦後、怒鳴りあげられた。互いに無得点の状況で一塁に歩かされ、相手投手をにらみつけた。その態度が逆鱗(げきりん)に触れた。「松井秀喜君は甲子園で敬遠されたとき静かにバットを置いて一塁に歩いた。お前の態度はなんや!?」と叱りとばされた。

 9回1死三塁で石川慎は敬遠された。最大の見せ場でバットは振れなかった。だが優勝を決めたのは、押し出しの死球。因縁はつながっていた。

 試合後、大阪桐蔭・広畑実主将(3年)から「甲子園でもフルスイングしてこいよ」と涙ながらに激励された。甲子園で通算56号を「狙いはしない。でも打てたらうれしい」。胸躍る舞台にともに乗り込む恩師に、万感を込めてウイニングボールを手渡した。【堀まどか】

 ◆東大阪大柏原

 1963年(昭38)に柏原女子として創立の私立校。64年から共学で柏原。70年から男子校で、2006年から現校名。生徒数760人。野球部は65年創部で部員数68人。OBに間寛平、はるな愛、板尾創路、中日久本祐一、オリックス阿南徹ら。柏原市本郷5の993。金治延幸校長。

 ◆Vへの足跡◆1回戦18-0西成2回戦2-0城東工科3回戦5-4近大付4回戦4-1初芝立命館5回戦3-0大阪準々決勝6-3大産大付準決勝11-0東海大仰星決勝7-6大阪桐蔭