<高校野球佐賀大会:鳥栖7-0唐津南>◇10日◇2回戦◇みどりの森県営

 打でもがばい。プロ注目の大型左腕、鳥栖の初瀬耕輔投手(3年)が、7回13奪三振で初戦を飾った。課題の制球難から4四死球も唐津南をわずか1安打に抑え込んだ。4番としても、先制2ランを含む2安打3打点の活躍。パワーが魅力の打撃でも、ネット裏のスカウトをうならせた。

 粗削りの初瀬らしいオープニングだった。初球がいきなり先頭打者をズドンと直撃。死球で歩かせると、続く打者にも四球の独り相撲でピンチを背負った。送りバントで1死二、三塁とされ、ようやくスイッチが入った。力勝負で切り抜け、続く2回も自らの失策などで作った2死満塁を三振ぎり。バタバタの立ち上がりを「予想の範囲内です」と平野国隆監督(65)に苦笑いで振り返られた。

 しかし、3回以降は圧巻だった。5回に初安打されるが、その後は許さない。自己最速142キロだが、この日もロッテスカウトの計測で141キロをマーク。4四死球を与えたが、13奪三振と力でねじ伏せた。「ものすごい緊張した。舞い上がってしまうんです」。1年前の夏も注目され、先発を任されながら制球を乱して初戦敗退。そのトラウマがあった。今春の九州大会も鹿児島商との1回戦で2安打13奪三振の快投を演じながら、別府青山との2回戦では9四死球。変則的なフォームから繰り出す「荒くれた」魅力は、この日の投球でも発揮された。

 ネット裏では巨人、中日など4球団のスカウトが見守った。中日の中田スカウト部長は「初めて見たが、投手としては成長段階。しかし打者としては…。癖がなくスイングスピードがある。広島の岩本のようだ」と予想外の収穫。そう思わせたのが初回の先制2ラン、そして3回のライナーで中堅手の頭を越えた適時二塁打。「パワーだけ自信あるんです」と意外にもこれが公式戦1号、高校通算2号というが、非凡な打撃センスも注目されそうだ。

 ただ初瀬はまだ進路を明言しない。「プロへの憧れはあります。あの舞台で投げたい。ただ…この夏の結果次第ですね」。投手としてプロで勝負したい初瀬だが、克服すべき多くの課題は分かっている。現状は進学が有力も、甲子園への戦いで自信を手にできれば…。初瀬にとって、夢への道筋を決める夏にもなる。【実藤健一】

 ◆初瀬耕輔(はつせ・こうすけ)1994年(平6)6月13日、東京・青梅市生まれ、佐賀・鳥栖市育ち。小2から野球を始め、香楠中では「鳥栖シニア」に所属。高校では1年秋から背番号1。2年秋、3年春と2季連続で九州大会出場。好きな球団はソフトバンク、選手は杉内(巨人)。183センチ、87キロ。左投げ左打ち。