<全国高校野球選手権:常総学院6-0北照>◇9日◇1回戦

 夏の甲子園初勝利は遠かった。南北海道代表の北照は、常総学院(茨城)に敗れた。4回裏無死一、三塁でエース大串和弥(3年)が、相手の主砲、内田靖人三塁手(3年)に中堅左へ先制3ランを浴びた。主導権を失うと、走塁面やバッテリー間のミスが相次ぎ、守備でも2失策。打線は散発4安打で今大会初の0封負け。3度目の夏は本領を発揮できないまま、わずか1時間31分で散った。南北海道勢は4年連続初戦敗退となった。

 エースの意地が、打ち砕かれた。4回裏無死一、三塁。大串の腹は決まっていた。打席にはプロ注目の4番内田。「内田君には、真っすぐで勝負したかった」。技巧派左腕と自負しながら、力勝負に出た。1ボール1ストライクからの3球目。内角を狙った。「打てるもんなら、打ってみろ」。高めに浮いた127キロ直球は、バックスクリーン左まで運ばれた。痛恨の先制3ランを浴びた。

 涙はなかった。「悔いはないです」。打たれたのは、内角への直球。今年のセンバツ以降、1番練習してきた球とコースだった。「(センバツの)浦和学院戦で打たれてからですね」。打者の近くを投げきれなかった春から約4カ月。夏の聖地で、強打者に投じた攻めの1球は、少し浮き、中に入ったかもしれない。それでも、全力を込めた1球だった。「思い切って投げた。しょうがないです」。力負けを認め、素直に敗戦を受け入れた。

 チーム全体の気合が空回りしていた。中盤の4回から6回にかけて、盗塁死や2度のけん制死でチャンスを逸し続けた。守備でも2失策を喫し、バッテリーミスもあった。追いかける展開で、自滅してしまった。7回以外は3人で攻撃終了と、全くリズムをつかめないまま、試合は終わった。河上敬也監督(54)も「甲子園は、ちょっとしたミスが命取りになると痛感した」と、落胆した。

 7回から登板した斎藤綱記(2年)は、試合後に号泣していた。2回無安打無失点で聖地デビューを果たしたが「大串さんのおかげで、ここまで来られたので」と、目を赤くした。寮では同部屋。いつも、投球についてアドバイスを受けてきた。「僕にとってはピッチングの兄です」。配球や変化球の握りなど、教わったことは数え切れない。「次は自分たちが、チームの主軸になる。レベルアップして(甲子園に)帰って来たい」と決意を新たにした。

 泣きじゃくる後輩の頭をポンとたたいた大串も「大きな成長になると思う」と、新チームのエース候補に期待した。1時間31分の、あまりにも短い夏。3度目の夏甲子園で、1勝はまたお預けとなった。たくさんの思い出と課題を持って、北照は再び出直す。【木下大輔】