<全国高校野球選手権:富山第一5-0秋田商>◇14日◇2回戦

 秋田商が富山第一に敗れ、東北勢全6校の初戦突破はならなかった。右下手投げのエース佐々木泰裕(2年)が、8回途中11安打5失点で降板。打線は、相手の右腕エース宮本幸治(3年)を攻略できなかった。

 秋田商・佐々木は力なく言った。「9回まで投げたかった。ベンチに入ってない3年生に申し訳ない」。0-5の8回、安打と死球で無死一、二塁としたところでマウンドを降りた。聖光学院、仙台育英、弘前学院聖愛、日大山形、花巻東。東北勢の全校初戦突破もならず「秋田県だけ勝てなかったのは悔しい」と肩を落とした。

 右下手からの、浮き上がるような軌道のボールが武器。ボールの下にバットを当てさせ、力ない飛球で打ち取れるかが生命線になる。21アウトのうち8個はフライアウトだったが、太田直監督(34)は「ゴロが続けてヒットになった。フライでアウトになるには球威が足りない」と被安打11の内容を見て、1年生左腕の成田翔にスイッチした。

 初めての甲子園で、佐々木は「全て見切られている感じだった」と実力の差を痛感した。7回2死二、三塁。4番幸山一大外野手(2年)に投じたカーブを左中間に運ばれた。長打を警戒する打者には低めに球を集めることが多いが「空振りを狙っていた。もうちょっと高くても良かった」。球速不足で球筋を見切られれば、組み立ても苦しくなる。小5から始めたサブマリン独特の制球感覚も、次第に乱れていった。

 打ち勝つことを目指してきた打線も、反撃の糸口をつかめなかった。相手エース宮本の変化球にバットが空を切り続ける。5回以外は毎回の10三振。3番杉谷汰一主将(3年)は「ストレート(最速144キロ)は大丈夫だったけど、あの速いスライダーは練習したことはない。追い込まれたら、甲子園のピッチャーはそう簡単に打たせてくれない」と、さらなるレベルアップを後輩たちに託した。

 佐々木は、黒土を持ち帰らなかった。トレーニングなどで、昨冬から球速は5キロ増して123キロに。「アンダースローでも練習をすれば速くなる。130キロを目標に直球で抑えられるように。来年必ず戻ってきたい」。甲子園での悔しさは、甲子園でしか晴らせない。【今井恵太】