<高校野球滋賀大会:近江4-0北大津>◇29日◇決勝◇彦根
闘将のホオはぬれていた。近江が6年ぶりに手にした夏の切符。勝利の瞬間、多賀章仁監督(54)は涙を流しながら「本当に成長したな」と実感していた。
完勝だった。打線が春県大会で完封負けした北大津のエース大村涼兼(3年)から1点ずつ確実に奪えば、エース小川良憲(2年)も三塁を踏ませない投球で、公式戦初完封。今大会は準決勝まで全てコールド勝ちで最多安打数86、最多塁打数127、最多得点67、最多打点62、最高チーム打率4割9分1厘と5部門で大会新記録を樹立し「打の近江」の印象を残した。
道のりは険しかった。昨秋県大会決勝、近畿大会と打撃が不振だった。悩んだ多賀監督は、平安時代の後輩で、同校監督の原田英彦監督(54)に「平安はなんで打てるんか教えてくれ」と頭を下げた。原田監督の答えは「体幹を鍛えて自信にする」だった。
そこで、冬はひたすらバットを振っていた練習法を一新。100メートル100本ダッシュと腹筋背筋500回ずつを毎日交互に繰り返した。根幹を鍛えれば野球の強さにつながる、と証明するため、自身にも重圧をかけた。「この夏県で負けたら、身を引こう」。背水の陣で臨んだ夏でつかんだ優勝。「いいチームになった。全国優勝が狙える、ね」。見据える先は、01年の準優勝を超える頂点だけだ。【小杉舞】
◆近江
1938年(昭13)近江実修工業学校として創立の私立校。48年に現校名に。生徒数は740人(女子306人)。野球部は57年創部で部員数は108人。甲子園は春3度、夏は11度目の出場。01年夏に甲子園準V。主なOBは木谷寿巳(元楽天)。所在地は彦根市松原町大黒前3511の1。松村良樹校長。◆Vへの足跡◆1回戦9-2草津2回戦22-0甲南3回戦10-0長浜準々決勝11-1彦根東準決勝11-1伊香決勝4-0北大津