<高校野球秋田大会>◇19日◇3回戦

 西仙北(にしせんぼく)が「いとこバッテリー」の活躍で第2シードの大曲工を5-0で破り、創部45年目で初のベスト8進出を決めた。母親が姉妹という右腕エース進藤拓也と捕手で主将の深浦寛(ともに3年)。進藤が完封で今大会の連続無失点イニングを「26」に伸ばせば、4番の深浦は今大会2本目の本塁打を放って勝利に貢献した。

 この2人、迷わない。女房役のサインに対し、エースは首を振らない。97球で1度もだ。部活動の信頼関係に加えて血のつながりがあれば「寛のサインがおかしいと思ったことはない」(進藤)のも不自然ではない。最速142キロの直球とスライダーで凡打の山を築き、テンポのいい投球に乗ったバックも併殺を3つ決めた。4戦30得点の破壊力で春の県大会2位・大曲工を散発4安打で完封した。

 打っては深浦だ。1回裏2死三塁で決勝の2点本塁打を放った。右打席で真ん中のスライダーをはじき返し、今大会2本目、高校通算27本目を右翼席に突き刺した。昨秋は2-13、今春は2-11で完敗した大曲工にリベンジして初8強。斉藤真一監督(41)は「深浦が『抑えられます』と言った通り。ウイニングボールを進藤から手渡されて、涙が出た」と褒めたたえた。

 進藤の母恵美子さん(49)と深浦の母留美さん(43)が姉妹。「狙って同じ高校に入ったわけじゃない」(深浦)が、最後の夏に「いとこバッテリー」が実現した。中学も高校も1年から正捕手の深浦を、中学では控え投手だった進藤が追う形で成長した。昨秋、やっと背番号1を勝ち取った遅咲きエースは、大会前の練習試合で4戦連続完封と絶好調。今大会も1回戦の小坂戦8回、2回戦の大館戦9回、そしてこの試合で26イニング連続無失点。話題性だけじゃない。

 小学6年だった04年夏には、2人だけで甲子園まで旅をした。「秋田商の応援列車に2人を放り込んだんです」と恵美子さん。秋田商対済美(愛媛)を観戦し、深浦は「広いなあ。ここでプレーしたら気持ちいいんだろうな」と思った。甲子園を目指す夢の源泉は2人一緒だ。

 学校悲願の3回戦の壁を破り、深浦は「僕らバッテリーと仲間が守備から波をつくれば、どこにも負けない」。6年前の思いがより現実的な目標になり、2人を突き動かす。【木下淳】