みちのくから世界へ-。この夏、仙台育英高(宮城)の西巻賢二内野手(3年)がU18日本代表に選ばれ、今月に行われたU18W杯で3位に輝いた。東北6県からは西巻を始め、各年代で計6人が日本代表に選ばれている。東北の野球のレベルは確実に上がっている。小学生から大学生まで、各年代で日の丸を背負う、みちのく侍JAPANを特集する。【取材・構成=高橋洋平】
日の丸を背負って戦った西巻は、甲子園から続いた激闘を振り返り、秘話を明かした。カナダに勝って銅メダルを獲得した表彰式後に宿舎へ帰り、各選手のひと言で締めくくられた。スピーチは背番号1の西巻から順番に始まった。
西巻 優勝したかったけど、このメンバーで戦えてよかった。この悔しい経験を胸に、これからはそれぞれ分かれた道に進むけど、行ったその場所で頑張ろう! っていう話をしました。周りからはハードル上げるなって、言われました(笑い)。
最後は主将の清宮幸太郎(早実3年)が締めた。話していくうちに、清宮の頬には悔し涙が伝っていったという。
西巻 清宮が最後、泣いていました。2年前には1年生で(W杯に)出場していたし、相当悔しかったと思う。
日本代表とはいえ、試合がないオフはどうだったのだろうか。中村奨成(広陵3年)からは頻繁にちょっかいを受けていた。表彰式後には2人とも笑顔で記念写真に納まっていた。
西巻 かまって欲しかったんでしょうね(笑い)。抱き合ってきますから。みんな普通の高校生ですよ。
世界での経験を糧に夢舞台へ挑戦する。大安の明日29日プロ志望届を提出予定だ。
西巻 世界で戦って、今までにない強い責任を感じた。自分みたいな体が大きくない選手が、どう戦っていくべきなのかが分かった。子供の頃からの夢を実現させたい。
◆西巻賢二(にしまき・けんじ)1999年(平11)4月22日、福島・会津若松市生まれ。小金井小2年から野球を始め、小6で楽天ジュニアに選出。宮城・秀光中教校では3年時に全国中学軟式野球大会優勝。仙台育英高では1年夏、3年春夏と3度甲子園出場。168センチ、73キロ。右投げ右打ち。家族は両親、兄。
8月末に台湾で行われたユニバーシアード競技大会で全7戦で4番に座った楠本泰史内野手(東北福祉大4年)が金メダル獲得に導いた。米国との決勝は4打数2安打3打点。「国際大会では、甘い1球を一打で仕留めなければならないことを学んだ」。すでにプロ志望届を提出した。憧れのプロ入りと、福祉大史上初となる通算100安打超えを同時に狙う。記録達成まで3本と迫り、残された仙台大戦で大台突破を目指す。「世界の高いレベルで試合をさせてもらった。とにかく勝負してほしい」と意気込む。
◆楠本泰史(くすもと・たいし)1995年(平7)7月7日、大阪府生まれ、神奈川・横浜市育ち。山内小4年から野球を始め、山内中では青葉緑東リトルシニアに所属。埼玉・花咲徳栄高では3年春にセンバツ出場。東北福祉大では1年春からレギュラー。182センチ、75キロ。右投げ左打ち。家族は両親、弟。
小林遼捕手(富士大4年)にとっては、ほろ苦い金メダル獲得となった。全7試合中4試合に出場し、先発マスクは2試合だけ。本職外の三塁も守り、6打数1安打3打点だった。「優勝したけどあまり貢献できず、悔しい気持ちの方が強かった」。第3週から合流した北東北大学野球リーグでは底力を発揮。復帰第1打席で本塁打を放ち「うまく引っ張れた。心の中でためていたものがあった」と留飲を下げた。その後も主将として巧みなリードとシュアな打撃でチームをもり立て、悲願のリーグ8連覇に導いた。
◆小林遼(こばやし・りょう)1995年(平7)5月27日、秋田・潟上市生まれ。天王小3年から野球を始め、小6で楽天ジュニアに選出。天王中では秋田潟上シニアに所属。仙台育英高では2年夏から3季連続甲子園出場。富士大では1年秋からレギュラー。170センチ、74キロ。右投げ左打ち。家族は母、弟、妹。
最速138キロを誇るU15宮本拓実投手(宮城・秀光中教校3年)が、11月1日に静岡で開幕するアジア大会のエース格を務める。威力のある直球だけでなく、カーブ、スライダーなど6種類の変化球を操る。秀光中の先輩である西巻以来の全中制覇を狙った今夏は2年連続の4強止まりだった。数日後に代表内定を知らされ「複雑だったけど、チームメートから頑張ってくれと言われた」と前を向く。8月末の強化合宿に参加し、刺激を受けていた。「意識の高い人が多かった。自分もレベルアップして、アジアで優勝したい」と胸を躍らせた。
◆宮本拓実(みやもと・たくみ)2002年(平14)8月3日、仙台市生まれ。袋原小1年から野球を始め、小6で楽天ジュニアに選出。宮城・秀光中教校では1年春からベンチ入り、中2から2年連続で全国中学軟式野球大会で4強進出。180センチ、76キロ。右投げ左打ち。家族は両親、兄、祖父母。
主戦を任されたU12山田脩也投手(宮城・南吉成小6年)は開幕投手を務めるなど全9試合中8試合に先発出場し、7月末から台湾で開幕したW杯で4位に導いた。今夏の甲子園に出場した仙台育英高の3番山田利輝外野手(3年)は兄。大会前に「打者はタイミングを外されることが一番嫌」と助言をもらい、ツーシームを習得した。チェコとの開幕戦では新球を駆使して3回を打者9人で抑える完全投球で流れを呼び込んだ。将来は甲子園で本塁打を放った兄の背中を追う。「自分も仙台育英で甲子園に行って、本塁打を打ちたい」と目を輝かせていた。
◆山田脩也(やまだ・しゅうや)2005年(平17)8月20日、仙台市生まれ。3歳から仙台スワローズで野球を始め、南吉成小1年から荒町タイガースに。今夏リトルリーグ全日本選手権出場。156センチ、47キロ。右投げ右打ち。家族は両親、兄、姉2人。
投手も野手もこなすオールラウンダーのU12戸沢快生(かい、秋田・東大曲小6年)が投打に活躍し、山田とともにW杯4位に貢献した。投げては110キロ台の直球を軸に3試合に登板し、計4回無失点。打っては7打数4安打3打点と気を吐いた。「秋田と日本を背負って、世界で戦った」と胸を張るが「アメリカは体格が違ったし、打者の威圧感がすごかった」と振り返る。将来は投手1本で考えており「変化球は器用に投げられる。緩急をつけて、直球を速く見えるように工夫したい」と将来のビジョンを語った。
◆戸沢快生(とざわ・かい)2005年(平17)6月30日、秋田・大仙市生まれ。3学年上の兄の影響で東大曲小1年から野球を始め、同5年秋からリトルリーグの秋田ファイターズに所属。右投げ右打ち。164センチ、50キロ。家族は両親、兄。