津軽球児が東北完全制覇に挑む。中学硬式野球の日本リトルシニア日本選手権(8月1日から5日間、東京・神宮球場ほか)の代表を争う東北大会が、16日から宮城県内で開幕する。昨年の新チーム発足から、ここまで秋、春とも2季連続で東北大会を制したのが弘前聖愛シニア(青森)だ。昨夏は第5代表で日本選手権に初出場し、今春は全国選抜(大阪)で8強入り。創設12年目で着実にステップアップし、昨年の楽天シニア(宮城)に続く東北「3冠」を足掛かりに、夏の全国舞台に乗り込むつもりだ。

 6県から55チームが参加する東北大会で、今年も秋春夏の「3冠」に挑むチームが現れた。春も優勝旗を手にした弘前聖愛主将の前田拓飛捕手(3年)は「3連覇に挑戦できるのは自分たちだけなので、3連覇したいです」と鼻息が荒かった。昨年の楽天に続く、3季連続の東北王者に照準を定めた。

 ただ、東北V3への道は容易ではない。5月27日に行われた抽選会の会場では、組み合わせのイタズラにどよめきが起きた。弘前聖愛はシードで2回戦からの登場だが、初戦は楽天と仙台太白(宮城)の勝者と戦う。序盤から強豪同士のつぶし合いに、弘前聖愛・鳴海光雄監督(46)も「相手の方が格上です」と苦笑い。昨年11月の楽天イーグルカップでは2-3で惜敗。今年5月の東北大会では3回戦で5-4で雪辱したが、「お互いにミスで点を取り合った試合。展開的には押されていた」。東北チーム相手で公式戦唯一の黒星が、楽天相手の1敗だけに、「ロースコアに持ち込みたい」と序盤の天王山を見据えた。

 それでも全国レベルを知り、ナインは勝つ術を磨いてきた。昨年は東北第5代表で日本選手権に初出場。現チームは3月の全国選抜で2勝を挙げ、8強入りした。春の東北大会では追われる立場だったが、楽天に競り勝ち、準決勝、決勝とも逆転勝ち。勝負どころを逃さない、試合巧者ぶりを発揮した。個人力も高く、背番号1で投手兼任の佐藤海内野手(3年)は185センチの大型遊撃手。4番浅利瑠良外野手(3年)も184センチの大型スラッガー。投手は先発の福田虎太郎(2年)、抑えの町田修平(3年)でつなぐリレーが勝利の方程式だ。

 チームは弘前学院聖愛中の準クラブ扱いだが、他にも近隣の7中学から選手が集まる。今年で12年目を迎える鳴海監督は、中高一貫の同校で社会科教諭を務める。平日は週2回程度の休日を取り、2、3時間の練習。専用グラウンドはなく、付属高校のグラウンドなどを借りながら、力を付けてきた。町田は通学に電車を利用して約1時間を要すが、「全国で戦いたい」と同中を受験。「夏の相手はさらに強くなる。春に自分たちの課題も分かった。修正して夏に臨みたい」と、3季連続の全国舞台に意欲を燃やした。【中島正好】

<今大会の展望>

 昨年は日本選手権が45回の記念大会だったため東北から5チームが出場したが、今年は「3枠」に戻る。決勝進出の2チームと、3位決定戦の勝利チームが出場権を手にできる。

 春季東北大会(春東北)の4強(弘前聖愛、宮城臨空、盛岡姫神、宮城北部)がシードされた。弘前聖愛のブロックでは、楽天対仙台太白は1回戦の好カード。仙台太白(宮城)は昨年8強。第5代表決定戦で弘前聖愛に敗れて全国切符を逃したが、地力はある。勝者が弘前聖愛に挑む。

 春東北準Vの宮城臨空は、184センチの長身右腕・中村和寛(岩沼西中3年)を擁す。130キロ台の直球は東北最速投手の呼び声が高く、リーチの長さを生かして球持ちがいい。

 盛岡姫神(岩手)は春東北で4試合中3試合で1点差勝ちと、競り合いに強い。順当なら準々決勝で昨夏4強の花巻(岩手)と対戦する。宮城北部は春東北の準決勝で弘前聖愛を苦しめ、エース右腕・吉野蓮(東向陽台中3年)が5回まで1失点と好投した。昨夏準Vの福島が同じブロックに入り、順当なら準々決勝で顔を合わせる。