ソフトバンクを支える人々にスポットを当て、随時掲載する「支えタカとよ」。第13回は今季開幕直前から1軍担当となった猪本健太郎ブルペン捕手(28)です。

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「唐獅子牡丹」が1軍に帰ってきた。開幕の3日前、3月26日に猪本ブルペン捕手の担当が2軍から1軍へ変わった。「びっくりしました。1軍は日本一を目指す、勝つという目的をもったところ。ただ頑張ろうと思いました」。

08年育成ドラフト4位で入団した当時は捕手だったが、打撃力を買われ内野手にコンバートされた。俳優高倉健が大好きで、登場曲に「唐獅子牡丹」を使用し、球場を沸かせた。17年オフに現役を引退。昨年からソフトバンクの2軍ブルペン捕手として再びキャッチャーミットをはめた。「しばらく捕手をやっていなかったし、今の投手は球を動かす人が多いので大変ですよ。音を出せなかった時は謝りますね」。投手がブルペンで気持ちよく練習できるために「パチン」といい音を響かせて捕球する。

「(甲斐)拓也が来て捕手をクビになったようなもの」。プロ3年目の11年、2つ年下の甲斐が育成ドラフト6位で入団してきた。「その時から肩も強かったし、フィールディングも違った。ものが違いましたね」。一緒に下積みし13年11月21日、2人とも支配下選手となり、会見では笑顔で肩を組んだ。「一緒でうれしかったですね。拓也には絶対活躍できるから、『マジで頑張れよ』ってずっと言ってきました」。強肩「甲斐キャノン」で一躍有名になり、今季は不動の正捕手となった。

仲のよい甲斐からは「ミットをつくって」と頼まれる。猪本ブルペン捕手は甲斐の新品のミットで、投手の球を受け、ガチガチから使いやすい柔らかさになるまで慣らしている。「捕り方も似ているんです。ミットの芯をつくれば、あとは(甲斐が)自分の形にできるので。少しでも役に立てればいい」。すでに4個ほどミットをつくり、そのうち1つは試合でも使っている。

猪本ブルペン捕手は「拓也は昔からナイスガイだけど、今はチームを背負う責任感が出ている。大人になったというか」と、成長を感じている。3軍で一緒に練習していた時、指導を受けた森コーチは現在1軍のヘッドコーチだ。「何か不思議な縁を感じますね。まだ練習場すらない3軍でしんどいことを乗り越えてきた。千賀も牧原も」と笑った。

プロ9年で安打はソフトバンクで1本、ロッテで2本の通算3本。「1年だけだったが、ロッテという関東のチームでもやらせてもらって貴重な1年だった」と話す。今季はけが人が多く、1軍は若い投手も多い。「ケガなくみんなが活躍してくれたらいい。僕が見られなかった景色を見てほしい。それを全力でサポートするだけですね」。支配下登録の会見で活躍を誓った2人は、違う形ではあるが、1軍で輝いている。【石橋隆雄】

◆猪本健太郎(いのもと・けんたろう)1990年(平2)12月23日、熊本県生まれ。鎮西高から08年育成ドラフト4位でソフトバンクに入団。10年フレッシュ球宴で優秀選手賞。13年オフに支配下登録され、14年7月19日楽天戦にプロ初出場し、初打席初安打。16年オフにテスト生を経てロッテに入団。17年限りで現役を引退。18年からソフトバンクでブルペン捕手。背番号は「108」。通算成績は16試合出場、25打数3安打0本塁打2打点。182センチ、93キロ。右投げ右打ち。

<ソフトバンク猪本ブルペン捕手の1日(ヤフオクドームでのナイターの場合)>

▼正午 ドーム到着。体を動かして汗を流し準備。シャワー浴び、ユニホームへ

▼午後2時過ぎ 試合前全体練習開始。野手のキャッチボール相手、打撃練習の球拾い、捕手の練習相手、翌日以降の先発投手のブルペン投球を受ける。練習後、食事、シャワー

▼午後5時30分 外野、右翼フェンス前で先発投手の遠投、キャッチボールなどを受ける

▼午後6時 試合開始から終了まではブルペンで救援陣の球を受ける。試合後、シャワー、帰宅

1日に受ける球は約100球。キャンプでは、約300球。