もう1度はい上がる。広島今村猛投手(28)が5日、マツダスタジアム内の球団事務所で契約交渉に臨み、700万円減の年俸8000万円で更改した。今季は勤続疲労の影響で27試合登板にとどまった。2年連続の減俸ながら下げ幅は抑えられ、昨季までの貢献度が考慮された。いつもは冷静な右腕は球団に感謝し、再復活を決意。500試合登板を通過点に偉大な先輩・大野豊越えを誓った。(金額は推定)

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2年続けて登板数を減らした結果が、2年連続減額での契約更改となった。それでも今村は普段通り淡々と言葉を紡いだ。ただ、自身を奮い立たせるような、自分に期待するような言葉、そして表情に熱が帯びた。

「またチャレンジ。いろんなことにチャレンジしないといけない。自分の体を見つめ直して、いいところも悪いところも受け入れてまた成長したい。やるからにはチームの勝敗を左右するようなポジションで。いいポジションで投げたい」

今季は勤続疲労の影響もあり、開幕を2軍で迎え、1軍昇格は7月3日と大きく出遅れた。27試合登板にとどまり、3勝1敗1セーブ4ホールド、防御率3・55に終わったが「毎年70試合、72試合を目標にしている。また来年から目標にしたい」と切り替えた。

プロ10年で425試合に投げてきた。「来年、再来年に500試合にいける。そこを目標にしている」。球団との交渉の席で別のターゲットも見えた。「大野豊さんがたくさん投げていると。いけるんじゃないかと言われた。また1つ目標ができた」。鈴木球団本部長から広島一筋、707試合登板の大野越えを期待された。入団時に育ててもらった投手コーチであり、尊敬する先輩の背中は新たなモチベーションとなった。

11年から3年連続50試合以上登板も、14、15年は2年で38試合登板と苦しんだ。はい上がった経験があるからこそ、前を向ける。来季に持ち越した国内フリーエージェント(FA)権取得も目標の1つ。「来年FAを取って、順調にいければ再来年500試合。節目が続くので、楽しみだなと」。11年目へマウンドへの意欲は薄れるどころか、高まる一方だ。外国人投手や今季台頭した投手との争いも待っているが「楽しみではあります。それはそれで」と不敵に笑う。逆境にも動じない強さこそ、はい上がる力となる。【前原淳】