1歩ずつじっくり、歩を進める。ヤクルトのドラフト1位、星稜・奥川恭伸投手(18)が5日、他の新人5選手とともに、埼玉・戸田の選手寮に入寮した。

初めて故郷石川を離れ、初の寮生活に入る。7日から始まる新人合同自主トレでは、球団はまず体づくりに集中させる方針。即戦力としての期待がかかる中、焦らずにプロの舞台で戦うための土台を築く。

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「ヤクルト奥川」がここから始まる。すがすがしい笑顔で入寮。「すごくワクワクしています」と18歳の初々しい本音がのぞいた。学ラン姿で昨年まで広岡が使用していた部屋に荷物を運び、取材対応を終えるとすぐにジャージーに着替えて施設を見学。「星稜から来ました奥川です。よろしくお願いします」。寮のスタッフに礼儀正しく頭を下げた。

初めて地元石川を離れ、上京。故郷の海や街並みを、心に刻んできた。「出てくる時は、すごく寂しかった。いつも何げなく見ていた景色も違って見えた」。原風景に別れを告げ、新しい世界に飛び込んだ。正月は、実家近くの神社に初詣。「1年間ケガなくやれるように」と願いを込めた。

故障せず1年目から戦う。この決意の先には「1軍で投げて、勝つこと」と、かねて掲げたルーキーイヤーの目標がある。球団も即戦力として期待しており、そのためにもまずは体づくりを最優先させる方針だ。奥川は昨年末まで星稜でしっかり練習をこなしており、橿渕スカウトグループデスクは「年末までの練習の流れを生かしたい。合同自主トレの終盤で、ブルペンで立ち投げができるように仕上げられたら」と、投球練習開始のメドを明かした。

新人合同自主トレは7日から始まる。高津監督が直接視察し、1月下旬に春季キャンプの1、2軍の振り分けを見極める。ヤクルトでは近年、大卒は1軍、高卒は2軍スタートが多い。高卒新人の1軍キャンプスタートとなれば17年の寺島以来3年ぶりとなるが、その寺島はキャンプ中に負傷。2軍へ移動した過去もある。奥川も練習に耐えうる土台を築くべく「投げることに関しては、ゆっくりやっていこうと思っている。まずしっかり自主トレについていけるように」と自覚を深めていた。

星稜の奥川から、ヤクルトの奥川へ。「新しいステージで、初めてのことばかり。まず環境に慣れて、充実した1年を送りたい」。輝く未来へ、足元を見つめながら進む。【保坂恭子】