キャプテン代行が決めた! 北條が振り抜いた当たりは、前進守備の左翼福田の頭上を越えていった。一塁走者陽川の生還を二塁ベース上で見届けると、右手を小さく握った。続けて三塁側ベンチへ、左手で大きくガッツポーズを作った。

1点を追う7回1死満塁。3四球で巡ってきた逆転機に燃えていた。左腕岡田の141キロ直球をたたき、走者一掃の適時二塁打。「前の打席にチャンスをつぶしてしまったので、ここしかないと」。5回に1死一、三塁の同点機でセーフティースクイズを失敗し、空振り三振に倒れていた。ミスを挽回し、この回に代打を送られていた先発青柳にも勝ち星を付けた。

チームの危機に、大役を任された。主将糸原が22日広島戦で右手有鉤(ゆうこう)骨を骨折して戦線離脱。前日23日から矢野監督に指名され、代行を務める。人生初という主将にも「考え過ぎると自分らしくなくなると思う。いつも通り、元気出してやろうと思っています」。負傷した糸原には「大丈夫ですか?」とLINEを入れたという。指揮官も認める元気印が、変わらぬ姿でチームを支える。

強い覚悟がある。12年の高卒ドラフト2位もプロ8年目。なかなかレギュラーに定着できず、規定打席に到達したシーズンは1度もない。がむしゃらにバットを振った昨秋のキャンプ。「1回は(フルシーズンで)出てみたい」と本音をこぼした。今季も同学年のライバル木浪と激しく遊撃を争う。まだまだ負けるわけにはいかない。

矢野監督は決勝打を「もう、ジョーに任せようと。一発で仕留めたところに価値がある」と評価。主将代行に指名した理由は「ジョーしかいないやろうと。誰かに聞いたわけじゃないけど、みんなそう思っていたんじゃないかな」と明かした。苦手とする先発左腕大野雄に対し、大幅な打線組み替えで“奇襲”も仕掛けた。好相性の陽川をプロ初の1番に抜てき。今季初先発の中谷や植田を起用し、8人の右打者をスタメンに並べた。福留、糸井の両ベテランを外す飛車角落ちでも勝利への執念を見せ、再び貯金を1とした。

前回は中日に敵地で3タテを食らった。ヒーロー北條は「その借りを返そうと思って、みんな必死でやっている。ファンの皆さんも、応援よろしくお願いします」。頼れるキャプテン代行が、背中でチームをけん引していく。【奥田隼人】

▼北條は観客を入れる試合となった10日以降の6試合で、打率3割3分3厘(15打数5安打)、1本塁打、5打点と当たってきた。無観客だった8試合では、12打数ノーヒットに終わっていた。