12球団合同トライアウトを見始めてから、もう10年以上がたつ。当初は趣味で見ていたが、11年からは仕事での取材を始めた。何が引きつけるのか。以前は選手名鑑に経歴を入力する作業を担当しており、ほとんどの選手が頭に入っている。野球人生を懸ける姿に、人間ドラマが凝縮しているからだ。

最初の強烈な記憶は、10年に41歳で参加したロッテ堀幸一だ。生え抜きで通算1827安打の実績を残し、球団からフロント入りを打診されながら現役続行の道を求めた。シート打撃の5打席で本塁打を含む2安打。ファウルを含め、次々と強烈な打球を飛ばす姿に「少しレベルが落ちる投手を相手にすると、これほどまでに一流打者はすごいのか」と実感した。打力は参加者の中で抜けているように感じたが、吉報は届かず引退となった。

15年のソフトバンク白根尚貴も印象深い。開星ではエースとして甲子園をわかせ、ぽっちゃり体形から「島根のジャイアン」と呼ばれた男。プロでは打者に転向し、育成契約の延長を断って受験した。体重15キロ減とすっかり引き締まった体で7打数3安打。単打、二塁打、三塁打と長打力を存分にアピールした。「これほどの打力があっても、ソフトバンクでは支配下になれないのか」と選手層の厚みを感じた。ヤクルトとDeNAが高評価し、ある程度獲得球団が決まっている「出来レース」ではない例もあると確信した。真剣勝負だから見応えがあるのだ。

実績や知名度はなくとも、掘り出し物のような選手を見つけるのも魅力だ。13年のソフトバンク有馬翔、15年のヤクルト金伏ウーゴ、18年のソフトバンク山下亜文らは、左腕からの切れのいい球が印象的だった。こうした選手の新たな入団先が決まった時に「なかなか見る目があるかも」と、1人ほくそ笑む。これもトライアウトマニアの楽しみだ。【斎藤直樹】