楽天田中将大投手(32)が、20日の練習試合日本ハム戦(金武)に登板する。8年ぶりに古巣復帰し、初の対外試合に注目が集まる。ヤンキースに移籍した14年の対外試合初登板を振り返る。

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<14年3月1日(日本時間2日):フィリーズとのオープン戦=2回2安打無失点>◇米フロリダ州タンパ

マー君、堂々の満点デビューです-。楽天からヤンキース入りした田中将大投手(25)が、フィリーズとのオープン戦でメジャー初登板。2回を2安打無失点、3三振を奪う上々の試運転を飾った。サバシア、黒田に続く3番手として5回表からマウンドに上がり、先頭打者に安打を許したものの、冷静に後続を打ち取り、予定の2回を32球で終えた。最速94マイル(約151キロ)の直球をはじめ、宝刀スプリットで三振を奪うなど、惜しむことなく、全7球種をお披露目した。

張り詰めた緊張感がほどけた瞬間、マー君らしい、笑顔がのぞいた。日米両国から注目されたメジャー初登板。ダッグアウトへ戻ると、イチロー、松井臨時コーチのスーパースター2人から声を掛けられた。2回を2安打無失点。キャンプインから戸惑いだらけの日々が続く中で、今、持てる力は出し切った。「とりあえず、ホッとしました」。これまで幾多の大舞台を経験した強心臓の田中でも、結果に内容が伴う32球に、ようやくひと呼吸できた。

昨年の日本シリーズ第7戦以来の実戦登板だった。投手史上で歴代5位、7年1億5500万ドル(約155億円)の超大型契約で入団したことにより、背番号「19」に刺さる視線は痛いほど感じていた。だが、場内に「マサヒロ・タナカ」のアナウンスが響いた際、観客席から湧き起こった声援は耳に届いていた。「うれしかったですけど、この先、これがブーイングに変わらないようにしっかり投げないといけないなと思いました」。登板直後の5回、いきなり中前打を許したが、冷静さは失わなかった。ネット裏にはライバル球団のスコアラーもいたが、最速94マイル(約151キロ)のフォーシーム(直球)を含め、計7球種を隠すことなくちりばめた。6回無死からは、1番リビアに対し、米国内で早くも「世界一」と前評判の高い89マイル(約142キロ)のスプリットで、狙い通りに空振り三振。「あのボールは良かったと思います」。終わってみれば、危なげなく計6つのアウトを重ねた。

昨季の連勝記録、移籍表明以降、絶えることのない周囲の雑音や、胸に去来する思いを封じ込めて、メジャーのマウンドに立った。「そんな僕に興味持っているのかなと思ってやっているので、気にしてなかったです。そこまで高ぶらなかったですね。でも、いい緊張感はありました。まあ、落ち着いていたと思いますよ」。試合後、サラリと言った通り、グラウンド内外で泰然自若を貫いた。全体練習開始が午前9時45分、午後1時5分の試合開始で、約1時間半前の午前11時20分に到着。登板日の先発投手は「自由出勤」ながら、新人離れしたマイペースで初舞台に臨んだ。

ファンやメディアだけでなく、同僚もが興味津々の視線を送る中、まずは文句なしのスタートを切った。ただ、田中は夢を追い求めるために太平洋を渡ったわけではない。「あこがれて来たわけじゃないです、勝負しに来たんで」。公式戦は1年162試合の長丁場、そして、今後も続く田中の野球人生への思いを込めた、32球だった。(所属、年齢など当時)