元侍が決めた! 今季新加入のヤクルト内川聖一内野手(38)が代打で決勝打を放ち、チームを劇的な逆転勝利に導いた。同点の9回1死満塁で広島フランスアのチェンジアップをしぶとく中前に落として接戦に終止符。09年WBC代表として世界一に貢献したクラッチヒッターが、東京オリンピック(五輪)代表に選出されたチームメートの山田哲人と村上宗隆、さらにはこの日2本塁打の広島鈴木誠也の前で存在感を発揮。今季初の本拠地お立ち台で「もうほんとに、ここに立つなんて想像もしてなかったので。気持ちいいですね。よかったなと思います」としみじみと喜びを語った。

1点ビハインドで迎えた9回に見せ場がやってきた。代打川端の適時打で同点とし、なお1死満塁で右打席へ。世界一を知るベテランは「僕がやるしかないと腹をくくって打席に入りました。正直、打席の中で、ちょっと気持ち悪くなるくらい緊張しました」と振り返る。カウント1-2からの5球目、外角チェンジアップを執念で中前に運ぶと、両手を広げて歓喜の表情。たちまちナインの手荒い祝福を浴びた。

これまでレギュラー出場が当たり前だった立場から新天地では代打の役割。「レギュラーと比べると1打席の1球で勝負が決まってしまいますし。今まで4打席で使っていた集中力を1打席で使うくらいの気持ちでやっています」という。同じく代打の川端、宮本が好調で「あれだけ打っているのを見ていて、一打席にかける集中力を勉強させてもらっていますし、2人の姿を見て僕もいつもやらせてもらってます。ほんとに感謝ですね」と謙虚に学ぶ姿勢を示した。現在3位と好調のチームの雰囲気についても「去年までを知らないのであれですけど、何点差で負けていようが、何とかしようというのは感じますし、それを形にできているのが今のスワローズの強いところかなと。今日ここで打たなかったら出番ないなと思っていました」と笑顔で振りかえった。

侍ジャパンに選出された後輩には、特に助言はしていないという。「僕はWBCは出てますが、オリンピックは出たことない。自国開催でプレッシャーものしかかってくると思いますけど、お任せできると思っていますし。プロ野球だけでなく、日本野球界全体の代表として選ばれた選手たちなので。素直に応援したいと思います。侍でも中心になる2人だと思うので。自分の力を出し切って、帰ってきて欲しいですね」。

雨の上がったお立ち台で今後も活躍を期待されると、しみじみとした表情で言った。「今日みたいにいいところで打てるように頑張りたいと思いますし……。他に言うことないね。もう、うれし過ぎてなんか(笑い)」。若侍たちに負けない勝負強さを、今後も示していく決意だ。