日刊スポーツ評論家陣が提言する「背水矢野虎 来季Vへの具体的方法論」。阪神でヘッドコーチなどを歴任した一枝修平氏(81)は得点力アップへ、打者陣の「見極め」をカギに挙げた。

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今年の阪神は優勝できる戦力は十分あると思っていたが、シーズンを通して伸びた選手が出てこなかったのが痛かった。打線でいえば、もちろん前半戦の佐藤輝の活躍があり、シーズン通して近本が安定し、中野も結果を残した。サンズ、マルテも前半戦は良かったが、特に後半戦はオーダーを固定できず、クリーンアップも日替わりの時期があり、苦しい試合運びを強いられた象徴だったと思う。

投手陣を見渡しても、救援陣でスアレス、岩崎は奮闘し、及川、アルカンタラも出てきたが、ほかに安定感ある投手が出てこなかったのは苦しかった。

とはいえ、やはり得点力不足が最大の課題だろう。チームの総得点541はリーグ5位。優勝したヤクルトとは約80点の差があった。糸原も打力はあるが、彼がクリーンアップに起用されることが多かったことが苦境を示していたと思う。打線全体で特に気になったのは、無死や1死で三塁に走者を置いた場面での打者の見極め。外角の明らかなボール球を空振りすることが多すぎるように思う。

今年の日本シリーズ。いずれも2点差以内の接戦となったが、打者陣のボール球の見極めという点ではヤクルトの方ができていたのではないか。阪神も得点力を上げるには、打者の「見極める力」を高めないといけない。特に走者を三塁に置いた場面では、ボール球を振っての三振だけは避けるべき。見極める力を高めることで、シーズン通して50得点の上積みはできるのではないか。

もちろん、チーム失策数が86と12球団ワーストだったように、課題の1つに守備力のアップもある。土のグラウンドを本拠としているので、他のチームより多くなる傾向はやむを得ない。だが、送球を安定させることは重要だ。基本は捕球したところでボールとグラブを離すこと。そして右投げなら右足を前に出して、左足をしっかり送球方向に踏み出す。担ぎ投げをせず、しっかりとした足運びができれば、スローイングは安定してくるはずだ。

今年振るわなかった高山、陽川、江越、北條らの奮起も期待したいし、クリーンアップに座るであろう大山と佐藤輝には打率2割8分、25本塁打以上を期待したい。課題は少なくないが、来年こそ優勝をつかみとってほしい。