日刊スポーツ評論家陣が提言する「背水矢野虎 来季Vへの具体的方法論」。最終回は85年日本一監督の吉田義男氏(88)が登場。シーズン終盤にみる矢野阪神の弱さを指摘し、「チーム一丸」を来季のカギとした。

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阪神のCSファーストを含む計145試合の戦いをすべてみた。テレビだったが、キャンプ、オープン戦にウエスタン戦もみてきました。勇躍したオリックスのポストシーズンも拝見した。

わたしは開幕前予想で阪神を毎年のように1位にあげています。今年こそ的中かと思ったが、外れましたな。惜しい試合に敗れた反省もあるが、いろんな意味で詰めが甘かった。

スタートダッシュに成功し、交流戦も乗り切って、トップに立ち続けたが、終わってみればメンバーががらりと変わっていた。前半と後半では全く違う戦いをみているようでした。

例えば、サンズが終盤出てこなかった。優勝争いができた立役者は、サンズと佐藤輝。コロナ現象で外国人が出遅れたチームもあったなかで、サンズの勝負強さは際立った。

ロハスではない、サンズです。不調だったかどうか、サンズを生き返らせることができなかった。そして、去っていきましたな。ちゃんとコミュニケーションがとれているのだろうかと思ってみていた。

チームは佐藤輝の加入で世代交代した。あれだけ打ちまくったのに、プロは甘くなかったということだろう。本人にも問題があるでしょうが、あまりにもボール球を振りすぎた。

巨人が9連覇したのは監督だった川上さんのもと各打者がボール球を振らないことを厳しくしつけられたからだ。今オフの佐藤輝はいかにボール球を振らない技術を身につけるかにかかっている。

センターラインで注目していた中野の守備力は、少しずつうまくなった。失策数が多いのも、今は気にすることはない。マスコミは過剰に持ち上げるが、143試合で30盗塁は大した数字ではない。福本豊になるのは無理だろうが、足で評価されるなら少なくとも赤星のレベルに育たないといけない。中野には来年からが勝負だぞと言ってあげたい。

チームは内野を軽視しているようだ。大山は外野の練習をしているらしいが難しい。大山の起用法には首脳陣の迷いがあるようだが、なんとか自信を取り戻してあげたい。

選手起用、チームを率いた特に終盤の戦いには、矢野監督の弱さがみてとれました。選手との信頼関係が大事と言い続けた。果たして勝つために1つになっていたのか。そこが巻き返しのカギを握っている。わたしはそうみます。【取材・構成=寺尾博和編集委員】(おわり)