「新虎の穴」に輝ネット誕生! 阪神と電鉄本社、尼崎市は22日、25年に同市にオープン予定の新2軍本拠地の移転を正式決定し、概要を発表した。球場を取り囲む防球ネットの高さは佐藤輝明内野手(22)の打球飛距離に合わせて、急きょ高く再設定したことが判明。規格外のパワーが工事計画をも変えさせる、異例のケースになった。

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横浜の夜の闇に消えたアーチが球場計画をも変えさせた。4月9日の横浜戦で、佐藤輝が横浜スタジアムの右中間場外に放った推定140メートル弾。「鳩サブレー」の看板を越す弾道は球界に衝撃を与えた。

人知れずあわてていたのは球団関係者だ。まさか越えてしまうのでは-。新2軍本拠地をぐるっと取り囲む防球ネットの設計見直しに急きょ、着手していたことが判明した。

球団広報によると「防球ネットの高さは最大55メートルで、外野部分は(それよりも)低くすることも検討していた。しかし佐藤選手の横浜スタジアムでの場外弾があったので再度、検証した上で、あの飛球でも越えない高さに設計し直した」という。右翼のすぐ後方には阪神なんば線の高架が迫っており、もしも打球が場外に出たら一大事。それも見越して十分な高さを確保したはずだったが、佐藤輝のパワーは予測を超越していた。

見直し前と後のネットの高さは非公表だが、当然ながら総工費も上がった。阪神1軍が高知・安芸球場でキャンプを張っていた時代は「大豊ネット」「ディアー・ネット」「フィルダー・ネット」など長距離砲が加入するたびにネットが増設され、彼らの名前を冠した通称は今に残る。新たに加わる「輝ネット」も語り継がれることになる。

この日発表された施設概要は、充実そのもの。グラウンドサイズや方位、黒土は甲子園と全く同じ。鳴尾浜球場にはなかった照明が完備され、2軍戦のナイター開催も可能になる。隣接する室内練習場は甲子園隣接の室内練習場よりも広い。寮も隣接し、若虎がいつでも、思う存分に汗を流せる環境を整える。観客席は常設の3600席に加え、外野の臨時席800席を用意する。「チームの要望を聞きながら設計に反映していっているというのが大事」と球団広報。選手ファーストを追求した設備になる。安心設計で、パワー自慢の若虎たちを待ち受ける。【柏原誠】

【阪神の特設ネット】

◆フィルダー・ネット 安芸市営球場の左翼側にあり、89年春季キャンプでフィルダーの打球がバックスクリーン後方の車を直撃した。安芸市当局が急きょ左翼席後方に設置した高さ7メートルの危険防止用ネットを設置した。

◆ディアー・ネット 94年に新外国人として加入したディアーの飛距離に備えて登場。フィルダーネットを3メートル伸ばし、高さ10メートルとし、ネットの10メートル後方に新しく10メートルの新支柱を立てた。2本の支柱間にネットを張ったものが「ディアーネット」と呼ばれている。鋼鉄製で費用は400万円。

◆大豊ネット 98年に大豊泰昭がディアーに並ぶ安芸最長の160メートル弾を飛ばし、同球場の右翼後方に高さ14メートルのネットを増設した。