ピッチ(回転数)×ストライド(歩幅)。速く走るとは、その計算式の最適値を探すことで、距離に合わせた走り方がある。

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西武のルーキー、育成選手が22日、陸上スプリントコーチである秋本真吾氏(39)から盗塁の極意を伝授された。2軍本拠地CAR3219フィールド。特別講師による“走り方授業”の最後にピンポイント指導が始まった。

27・431メートル。塁間を一瞬でも速く走る術だ。

<1>「デッドリフト(地面からバーベルを上げる動作)の構えに近い状態から」

まずスタート時の姿勢。背中が丸まっていると、重い物は上げにくくなるが、走りも原理は同じ。背中は頭から串が刺さっているようなイメージを保つ。股関節は曲げて、お尻の筋肉を使って、強いパワーを地面に伝えていく。

<2>「前足体重を意識」

スタートの瞬間は前足となる右足に体重をかけ、後ろ足で蹴る動作を少なくする。「野球選手は足の筋肉が強く、後ろ足から蹴って進もうとすることがある。足が後ろに(必要以上に)流れて膝が前に出てくる」。一見、歩幅が伸びていいようにも思えるが、同時に足の回転数も落ちてしまう。ベストな加速でなくなり、タイムのロスとなる。

<3>「足は自分の体の真下に着地するイメージ」

これは走りだしの数歩。練習では3足長(靴3足分の約90センチ)間隔で3つのマーカーを置き、短い歩幅での加速を意識した。「野球選手は速く走るイコール足を遠くに着地させ、歩幅を伸ばす傾向にある。ただ、それをスタートでやると、力が入らない場所に足が着地する。肉離れの原因にもなる」。データでも「最初は回転数を重視した方が有利」と証明される。小刻みに前傾を保ち、ストライドは徐々に上げる。

<4>「あごを上げない」

走りだしたら、ボールの行方を確認する時も含め、あごは引いたまま。上がってしまえば、最大のパワーを地面に与えられない。

練習前には西武源田、楽天西川、ヤクルト山田、日本ハム五十幡らの動画も手本としてチェック。また100、200メートル世界記録保持者ボルト氏の映像でも「足の着き方」を確認した。

50メートル5秒8の俊足で春季キャンプはA班(1軍)に抜てきされた育成の19歳長谷川は「大事な場面での盗塁、二塁から1本で帰ってくる走塁ができればいい」。濃い授業も糧に猛アピールを誓った。【上田悠太】

◆秋本真吾(あきもと・しんご) 1982年(昭57)4月7日、福島・大熊町生まれ。現役時代は陸上男子400メートル障害で五輪強化指定選手に選ばれ、200メートル障害の元アジア記録保持者。現在はスプリント系のコーチとして子供からトップアスリートまで幅広く指導。阪神でも16年秋から特別講師を務める