「一番エグい」。その軌道は、今も強烈に西武中村剛也内野手(38)の脳裏に残る。ソフトバンクやヤクルトで活躍した新垣渚氏(42=現ホークスジュニアアカデミーコーチ)の伝家の宝刀スライダー。「3回曲がる。曲がったと思って打ちにいったら、また曲がって。で、また最後に曲がってましたもん」。

プロ3年目、04年8月28日の初対戦の空振り三振から始まり、翌05年は6打数0安打で5三振。06年は3打数0安打で3三振を喫した。高校時代の金属から木製バットへの切り替えも、プロの速球も、あまり苦にはしなかった。しかし「ほんまにエグかった」という“新垣スライダー”は別格だった。キレ、曲がり幅、その残像に手を焼き続け、三振をおかわりし続けた。

もちろん無安打だったわけではない。アーチもかけている。通算の対戦成績は、20打数3安打3打点の1本塁打。そして三振は…。17回の凡退のうち、何と「14」にのぼる。1955分の14。されど、3回曲がるスライダーのエグさは、抜きんでていた。

新垣氏は言う。「おかわり君は1発が怖かった。投手からすれば、三振をしても悔しがらなかったのが不気味な感じがした。真っすぐは怖いので、ホームランコースにいかないようと、外のスライダーを使っていた」。強く脳裏に残っていたのは、新垣氏も同じだった。本塁打の怖さはもちろん、中村の三振する姿も、特別だったから。【上田悠太】

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