長いトンネルを抜けた。西武隅田知一郎投手(23)が6回5安打1失点で今季初勝利を挙げた。昨年4月2日から球団ワーストの自身12連敗を喫していたが、プロ初登板以来、約1年ぶりの白星。チームは4連勝で両リーグ最速の10勝に到達。直接対決を制し、首位ソフトバンクにゲーム差なしの2位に迫った。

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「長らくお待たせしました!」。お立ち台で目に光るものを浮かべた隅田は、少し照れながら「汗です」と笑った。イヤホントラブルでインタビューが中断した間、沈黙を埋めるようにスタンドのあちこちから「すみだ~!」の声が飛んだ。1年間使い続けてくれた首脳陣、応援し続けてくれたファンへの感謝が込み上げた。

昨年3月26日のプロ初登板初勝利以来、389日ぶりの白星をつかんだ。立ち上がりが肝要だった。12日のロッテ戦も5日の楽天戦も、初回に失点。連続四球からの自滅もあった。「シンプルにベースの上で、柘植さんのリードを信じて腕を振っていこう」。ストライクゾーン勝負を心がけ、初回2死一、二塁で牧原大を直球で二飛に打ち取った。

6回、ピンチを迎える。二塁打から右飛タッチアップで走者を三塁に。豊田投手コーチの言葉が背を押した。「投げてもあと15球だ。魂込めて投げてこい」。中村晃を二ゴロに仕留め、三走・牧原大を本塁タッチアウトに。チェンジアップとカーブを有効に使った。リードを守り、あとはベンチで祈った。

長い1年だった。ルーキーイヤーは1勝10敗。グラブを昨季使った黒から「気分転換です。明るい色の方がいいかなって」とクリーム色に変えた。この日は「気まぐれです」と、1軍戦で初めてストッキングを見せるオールドスタイルでマウンドに上がった。勝てない日々。流れが変わればと少しの変化を交えつつ、芯はぶらさなかった。

12連敗は苦しかったはずだが、そうは言わなかった。「限りなく、誰も経験したことがないくらい、いい経験ができたのかなって思うので。すごくいい糧になると思います。初勝利くらいうれしいです」。多くの投手にとって、プロ初勝利は生涯忘れられない1勝。この夜の景色も、引けを取らない。【鎌田良美】

■18日合流の若林が先制1号

若林が先制の1号ソロを放った。1回1死でソフトバンク東浜のカットボールをすくい上げ、バックスクリーン右まで飛ばした。2月の練習試合で左脇腹を肉離れし、18日に1軍昇格した。本塁打は21年5月以来、2年ぶりで「(先発した)隅田の気持ちが楽になったのなら、いいホームランだったと思います。去年は長打が出なかったのですごくうれしいです」と喜んだ。