苦しんで、苦しんで生み出した今季チーム初のサヨナラ打だった。

カモン、カモン-。試合を決めたヤクルト中村悠平捕手(32)が両手で仲間を手招きをする。ベンチから飛び出した村上らが、ペットボトルの水しぶきを上げながらヒーローに抱きつき、歓喜の輪ができた。

延長11回1死二塁。10回から途中出場した中村が、カウント1-1から中日山本の直球を中前に運び、決着をつけた。打席前の打率は1割2分8厘。「開幕から打つ方では貢献できていなかったので決めたかった」と決意の一打だった。

世界一となったWBCの疲れは確実にある。「ゴールデンウイーク頃に疲れが来る」のが通常のシーズン。だが今年はWBC開催の3月に照準を合わせた影響で「1カ月前倒しで来ている感じ」と開幕から約3週間もがき苦しんできた。

スタメンを外れたこの日は「ずっと悩んでるから」と初回からベンチ裏で素振り。サヨナラの打席では普段の茶系から白木のバットに持ち替えた。「気分転換です。自分の中でも何かを変えたかった」。チームはこれで首位タイに再浮上。高津監督は「歯を食いしばって頑張ってくれている」と正捕手の苦労をねぎらった。【三須一紀】

▽ヤクルト大西(延長10、11回ともに3者凡退で今季初勝利)「しっかり投げないとムーさん(中村)に怒られるのでゼロで抑えられるように頑張りました」

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